第一話『光るもの』
仕事帰りにいつも通る川沿いを歩いていると、川底に光るものを見付けた。
それはギョロリと動きつつ、やがて水面に姿を現した。
光るのもは、胴が長く巨大な魚の目だったのだ。
魚は獲物を探すように、妖しく光る目を動かしている。
俺は、その魚の胴体に幾つも生き物の顔があるのを見てしまった。
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第二話『思い出』
冬の夜道、自販機で購入したおしるこを飲み干す。
こんな季節でも、深夜の散歩は私の楽しみだ。
誰も見ていないだろうと、空き缶を道端に放置した。
生前はそんなことが日課だったなぁと、自販機の隣で思い出に耽る。
さて、ずっと一人も心細いので、そろそろ仲間を増やすとしようか。
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第三話『呑まれる』
早朝、閑散とした砂浜で海を見ていた。
視界の中心に何かがいるようで、ただ凝視するしかなかった。
海上に霞む何かの姿が、少しずつ見えてくる。
俺は先程まで感じていた恐怖が消えていることに気付く。
もう、呑まれてしまったのだ。
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第四話『低山ハイキング』
低山ハイキングが趣味の私は、近頃から新しい山へ挑戦してみようと思い、自宅から車で一時間ほどの所にある低山へと向かった。
多くの木々に囲まれた景色は、いつも登っている山と似ているようで違う。
ただ、なぜだろうか。
景色の写真を撮ろうとすると、カメラの顔認識がやたら多く反応するのだ。
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第五話『冷風機』
粗大ゴミから拾ってきた冷風機は、まだ使えるものだった。
エアコンが無いこの部屋で暮らすには、それに代わる道具が必要だ。
私は冷風機を動かすため、底に設置されたタンクを取り外す。
その瞬間、昨日片付け忘れていたタンクの水から両目の潰れた金魚が飛び出し、スッと私の中に入っていった。
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第六話『水田』
家の近くの水田には妙なモノが出る。
夜、仕事から帰るとその場所で何かが蠢いていた。
大きさからして熊ぐらいだろうか。こちらには気付いていない様子で、何かを探しているふうにも見える。
こいつを見たのはこれで10回目だ。
そろそろ私のほうから声をかけてやろうかと思っている。
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第七話『祖母の人形』
俺の部屋には可愛らしい日本人形がある。
これは死んだ祖母の形見で、大切なものだ。
俺は祖母の最期に立ち会えなかったが、この人形は祖母の最期を見ていた。
ある日、夢の中で人形が話しかけてきた。
「おばあさんは死ぬ直前まで、お前のことを気にかけていたよ」
目が覚めると、俺は泣いていた。
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実話『夜の公園』
夏になると、夜7時を過ぎてから散歩行くことがある。ちょっとした公園のような場所の近くを通りかかったとき、そこで10人以上の子供達が遊んでた。
最初はドキッとしたが、保護者でも居ればまぁそんなこともあるのかと思って横目に見てた。
しかし大人らしい影が見当たらず、辺りが薄暗くシルエットで何となく分かるのだが、やっぱり子供しかいない。 その瞬間、恐ろしいことに気付いてしまった。
子供達が遊んでる姿は見えるのに、その声も遊ぶ音も何一つ聞こえていなかった。
聞こえるのは虫の鳴き声や木々の音のみで、恐ろしくなった私は何かを考えながら真っ直ぐ家に帰った。
何を考えていたかなんて覚えていない。あの子供達がどんな存在だったのか気になるが、もう一度確かめる心の準備ができない。
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終。
作者mahiru
お久しぶりです。前回投稿した『超短編集・1』が好評だったので、2も出してみました。今回は全8話で、最後の話が私の体験談です。
この話は全てTwitterに『#呟怖』のハッシュタグで投稿した話なので、私のTwitterをフォローしてくださっている方は既に読んだことがあるかもしれません。
空海まひるの怪談用Twitterアカウント【https://twitter.com/kaidan_sorami?lang=ja 】