短編2
  • 表示切替
  • 使い方

烏【烏シリーズ】

高校三年生の秋。

受験のストレスで軽い鬱になっていた僕は、平日に体調を崩して高校を休み寝込んでいた。元々身体はあまり丈夫ではなかったため、このようなことは珍しくなかった。

目が覚めると夕方の5時過ぎだった。父も母も仕事で、帰ってきている気配もない。弟も部活動だろう。

静まった部屋の外から遠くで車が走る音が聞こえてくる。僕はふと、その音のする方に目を向けた。窓だ、カーテンが開いている。何かと目が合った。ベランダの柵に何かが居る。カラスだ。カラスが窓の向こうから僕のことをじっと見つめている。

僕はそのカラスに違和感を覚えた。そしてその違和感の正体は直ぐにわかった。

目が赤い。赤黒い。まるで血のような色だ。その赤い目とにらめっこをしているんだ。目をそらしたいが、なぜかそのカラスの目から視線を外すことが出来ない。

しばらく睨み合っていると、喉の奥から血のような味が上がってくるのがわかった。吐き気が襲う。そしてさっきまでピクリともしなかったカラスは「カァ~」と鳴くと同時に僕は嘔吐するように激しく咳をした。痛い、吐血した。

しばらくすると落ち着いてきたので、僕は再び窓の方へ視線を移した。カラスはもう、そこには居なかった。

ふと時計を見ると、時刻は午後6時前だった。玄関の戸が開く音がした。母が帰ってきた。誰が帰ってきたかは、だいたい音でわかる。ちなみに弟は既に帰っていたようで、ゲームをやりながら気に入らないのか、何か文句を言っている声が聞こえる。

いつも通りの日常に戻ったようで、僕はほっとした。外もだいぶ暗くなってきたので、カーテンを閉めようとして窓の方へ行くと、さっきまでカラスがとまっていた柵の下には黒い羽が一つだけ落ちていた。あのカラスの羽だろうか?あれが一体何だったのかは分からないが、一つ思い出したことがある。

僕の友人に、霊感が強くてオカルト好きな変わったヤツが居た。そういう知識も豊富で、そいつとは中学二年の時からの付き合いだ。あだ名はカラス、少し前までときどき会っていたが、お互い受験で忙しいので、最近は連絡すら取っていない。烏といると、やたら霊に遭遇しており、当時は心霊スポットのような所にも行ったりして、その時の体験談がいくつかあるが、それはまた別の話。

Concrete
コメント怖い
2
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信

吐血後に体調戻った(°Д°)?だとしたら何かに憑かれてたのを助けてくれた?又は病を治してくれた?事になるのかな(°Д°)?もしかしたら八咫烏だったのかな(°Д°)?

返信