短編2
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従妹

 私の従妹は、所謂見える人ってやつなんですけど、私が中学生の頃こんな事があったんです。

ある日、私は従妹の家で、従妹とその友達二人の宿題を見てあげていました。

時刻は午後3時頃だったと思います。ぼちぼちやめておやつでも食べようかと話していた時でした。

「ただいま」

家の玄関から軽快な女性の声が響きました。従妹のお母さん、私の叔母でした。

「おじゃましてます」

居間の襖を開け大きな声でそう呼びかけると、私に続いて従妹の友達も、

「お邪魔してます!」

と、声を上げました。

すると廊下を歩く音がこちらに近づき、叔母が襖から顔を出してきました。

「あらあら、皆いらっしゃい、楽しそうね、何してたの?」

叔母がそういうので、私は、

「宿題を、」

そう言いかけた時でした。

「だ……れ?」

従妹が突然、私の言葉を遮る様にそう言ったのです。

当然私たちは、

「えっ?」

と、一様に何言ってるの?みたいな顔で互いの顔を見合わせました。

目の前にいるのは、どこをどう見ても私の叔母です。

が、更に従妹は言いました。

「お、おか、お母さんじゃ……ない」

そう言った従妹の顔は蒼白になっており、肩を震わせ、歯の根が合わないのかガチガチと口から音がこぼれていました。

瞬間、私は叔母の方に顔を向けました、すると叔母は、

「なぁぁぁんでわかっちゃうかかかなぁぁぁぁぁあ!」

肌が粟立つようなおぞましい声でそう言うと、口の中から赤い泡をぶくぶくと、まるでカニの様に吐きながら言ってきたんです。

私も従妹たちもパニックでした。泣き喚きながら無我夢中でその場から逃げ出し、気がつくと私と従妹たちは、庭で抱き合いながら泣き崩れていました。

異変を察した隣に住む年配の女性が、私たちを見つけ、おろおろとした様子で保護してくれたのを、今でも覚えています。

その後、迎えに来てくれた叔母を見て、従妹は泣きながら

「お母さん!」

と、駈け寄ってきた叔母に抱きついていました。

この事件は当時警察沙汰になり、私も事情聴取を受け、変質者による不法侵入として捜査されたそうです。

変質者……であればいいと、今でも切に願っています。

だって、生きた人間も怖いですが、もしそうでないのなら、その恐怖に終わりはないのですから。

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