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短編2
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呟怖その三

第一話「布団」

朝7時、2階に上がり息子を起こしに行くと、ベッドの上で布団を被ってもぞもぞとしていた。いい歳した高校生が何をやっているのか、布団越しに背中を叩いてやった。

いてっ!?

何故か、声は1階から聞こえた。

1階にいる息子を確認し聞くと、洗面台で誰かに背中を叩かれたらしい…

第二話「包丁」

台所で母が持っている包丁を見て私は驚愕した。

包丁が血まみれだったのである。

急いでその事を母に言うと、振り返り包丁を見せてくれた。血はついていない。何言ってんのと母に一蹴された。

翌日、母は父との夫婦喧嘩の際に、父の腹部を包丁で刺した。

事件以来、その包丁は私のお気に入りだ。

第三話「ライター」

公園の個室トイレで用をたしていると外から、カチッ、カチッ、という断続的な音が聞こえた。ああ、ライターが着かないのか。苦笑しながら俺はポケットからライターを取り出し個室から出た。良かったらこれ……目の前に、ざんばらの髪をした女が、耳元まで裂けた口で、カチッカチッと鳴らしていた

第4話「影踏み」

公園で知り合った男の子と影踏み遊びをした。先に踏んだ方が勝ちだ。

ようやく男の子の影を捉え足で踏みつけた瞬間

あっ、と聞こえたので顔を上げると、男の子の姿はそこになかった。

翌日、公園は立ち入り禁止になっていた。昨日から男の子が1人、公園で行方不明になったらしい。

第五話「悪魔の申し子と呼ばれた男」

昔、母が鉄工所で働いていた時 、同僚から一通の手紙を貰ったという。無口で、まるで自分の素性を隠して生きているかのような人だったらしい。なんて書いてあったのかと母に尋ねると、母はこう答えた。

さあ、読んでないもの。だって、4人も殺した人なのよ?怖いじゃない。

そう言って母はその手紙を破り捨てた。

……実話です。

第六話「月見で一杯」

お猪口に注いだ酒に、見事な月が落ちた。

秋の夜長、縁側で一杯やるのもまた一興。

ユラユラと酒波に揺らめく満月を、口元に運び一気に飲み干す。

瞬間、「えっ?」辺りが一瞬で真っ暗になった。

月が……消えた?

今宵は中秋の名月。

「化かされたかな…?」

苦笑いし、見えない月を思いながら、再び酒を飲み干した。

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