親類が亡くなり田舎に帰った。
故人は80歳を越え寝たきりでも頭はしっかりした人だった。
突然の訃報に皆少し驚いたが、年齢や病状から心のどこかで準備ができていた。
通夜、葬儀が終わり、久しぶりに会う従兄弟の車に乗り実家へと帰る道すがら亡くなるまでの話を聞いた。
「一人で風呂に入って溺れたんだよ」
「寝たきりだったのに?」
「介護の◯◯おばちゃんがうとうとしてて起こさないでおいたのではないかな、と言ってたよ。◯◯おばちゃん、悔やんでたわ」
「そう」
流れる車窓は田舎に良くある国道沿いの光景。どこもチェーン店ばかり。
「でも死ぬ前日に変なこと言っててな」従兄弟はちょっとニヤニヤしていた。
「天井から誰か覗いてる、家の玄関から知らない夫婦連れが入ってきた、早く追い出せと凄い剣幕だったって」
「◯◯おばちゃん、そんな物見えない、居ないって言っても「すぐそこにいるだろ!」と気持ち悪がってな。おばちゃんも怖くなって俺の家に電話してきたよ。」
「なんだそれ、虫の知らせってやつか?」
「さ~、でもちょっと面白いだろ?」
「病気が悪くなった訳でもなし、突然の事故に虫の知らせってあんのかよ」何となくニヤけ顔が気に入らなくて話に乗る気にならない。
「死神だろ」
従兄弟はニヤけ顔のまま、車は実家についた。
作者ねむい