私はある都市伝説の調査のためにとある村まで行ってきました。
なんでも、村では食人鬼が現れて、村人を食い殺してしまうというのです。
私は、車で2時間揺られながらその村へ行きました。
何やら怪しげな森があったので、恐る恐る入って調査をしていると、後ろから
「助けて!!」
と声が聞こえてきました。
振り返ると、10歳に満たないくらいの女の子が息を切らしながら立っていました。
「どうしたの?もしかして、迷子?」
と声をかけると、女の子は
「助けて!!今、斧を持った仮面の大男に追いかけられてるの!!私、あいつに捕まったら殺されちゃう!!お願い、私を村まで送り届けて!!」
と必死そうに訴えてきました。
大男...そいつが、都市伝説の鬼だろうか。
そんなことを考えながら、とりあえず女の子を車に乗せて村まで向かいました。
村の近くまで送り届けると、女の子は
「助けてくれてありがとう。」
と言って村の方へ走っていきました。
それから小一時間、私は鬼の調査のために村を離れて辺りを散策していました。
すると、村人と思われる人たちが一斉に村の方角から逃げてきました。
20代くらいの女性がこちらに気が付き、私に向かって叫びました。
「なにしてるんですか!早く逃げてください!!鬼が村の近辺で暴れているんですよ!!」
私は状況が呑み込めず、女性に尋ねました。
「一体何が起こっているんです?すみません、私はこの村の出身ではないので...。私の車があります、宜しければ逃げながら詳しくお話を伺っても?」
女性は私と一緒に車に乗り込みました。
村とは反対方向に崖を走っていると、正面からいきなり斧を持った仮面の大男が現れました。
「うわあああああああ!!?」
私は驚いた拍子に間違えてアクセルを踏んでしまい、大男にぶつかりました。
ドンッ
鈍い音が響き、ぶつかった衝撃で大男は吹っ飛び、崖から落ちました。
車を停車させ、恐る恐る降りて見てみると、そこにはもう大男はいませんでした。
恐怖で震えながらも、私は胸を撫でおろしました。
「うう...。」
車の中から女性が頭を押さえて出てきました。
「ごめんなさい...頭を打って気を失っていたみたいです...。どうしたんですか...?鬼は...?」
私は女性を落ち着かせ、言いました。
「安心してください。もう村を脅かす鬼は死にました。...全く、あんな斧と仮面でビビらせるから...ただでさえガタイのいい男が夜道を歩いてたら怖いっていうのに...あの鬼もバカでしたね。」
それを聞いた女性は、青ざめた表情で私に詰め寄りました。
「あなた、なんてことをしてくれたんですか!!その人は、村を鬼から守って下さる、村で唯一の神官様だったんですよ!?神官様を失った今、この村はもう...。」
作者Ⅿ.T.
斧を持った大男は、村を守る神官だった。
では、大男に追いかけられていた女の子は一体...。