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中編5
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廃墟の落書き

数年前に実際に体験したことですがいまだにあのときのことを絶対に忘れられません。

僕の気持ちを整理する意味でもここにその体験を書いておこうと思います。

そしてもし何か知っている方がいれば、教えていただけると幸いです。

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まだ大学生だった頃、若気の至りで僕は友達の河本(仮名)と吉塚(仮名)の合計3人で夏休みを利用して某県の山中にある幽霊スポットとしても有名な廃墟にいきました。

最初僕らは軽い気持ちで車の中でバカな話をしながら目的の廃墟へ向かっていました。そして廃墟に行った証拠にと河本は一眼レフを持ってくるなど今では考えられないぐらい浮かれています。

そんなこんなしているうちに目的の廃墟につきました。車を廃墟から少し離れた広くあいている場所に駐車したそのときでさえ僕らは相変わらず浮かれていました。吉塚に至ってはそこらへんの草に立ションするほどでまるで緊張感ゼロでした。

それもそのはず、廃墟といっても窓が割れている二階建てそこらの建物で、いってしまえば田舎によくあるような潰れた施設のようにしかみえず、おおよそ心霊スポットといわれるような雰囲気は感じられなかったからです。

そのときは後になにがあるともしらずにこのときはただただバカ騒ぎしていました。

そうして正面玄関らしきところから入っていったのですが特によく心霊番組などである「空気が変わった」ということも感じず廊下を進んでいきました。ただ少し気になったことといえば黒いスプレーで殴り書きされたような落書きが壁の至る所にあったぐらいです。河本はいたるところにカメラを向けシャッターをきっていました。

このときは壁の落書き以外に気になったこと以外、特になにも感じることはなかったです。

しかし廊下を進んでいくにつれて、その黒い落書きは増えていくのがわかりました。そしてそれは一番奥の部屋の扉まで続いていました。そこに至ってはもう真っ黒でした。普通壁の落書きというとカラフルな色で大抵英語や絵が描かれているものだと思っていましたが明らかにこの廃墟の落書きは”黒一色かつ意味をなしていない”と異質なものでした。

まるで”幼稚園児が黒いクレヨンで画用紙いっぱいにぐちゃぐちゃにかいている”ようなものでした。少なくともこのときはそのようにしか見えませんでした。

この異様な光景に僕と、お調子者な吉塚でさえ黙りこくっているばかりですが河本は相変わらず写真を撮っていました。さすがに気味悪くなって本当だったら一刻でも早くこの廃墟からでたかったですが、何よりも「この扉を開けたらなにがあるのか」という好奇心が勝っており、それは他の二人にも同じことがいえたのでした。そしてその部屋にはなにがあるのか確認する事にしたのです。

とはいえさすがにあけるとなると勇気がいるもので誰かが進んでやる訳でもなく結局じゃんけんで負けた僕があけることになりました。

幸いかどうかはともかくとして扉に鍵がかかっているふうでもなくすんなり扉は開きました。一瞬

ただのなにもない部屋だと思いましたがすぐに部屋の壁に落書きがされているのが見えました。

そしてそれは黒色でもなくしっかりと意味のある絵でしたが僕たち一同は唖然としました。

それは女性の全身像だったのですが首がとても長くかかれておりどうみても不気味でした。そして表情はこの世の人の表情とは思えないほど不吉そのものであり口は歯を剥き出しにして笑っているともにやけているともとれず、そしてその目は黒くそして空虚でしたがしっかりとこちらに視点をあわせてきていました。そのとき思い出したのは某少年犯罪者がかいたとされる絵でしたが明らかに表情の不気味さであったらこちらが数段も上でした。

これにはさすがに一同絶句し、その場で張り付いたように動きを止めていました。しかし我に返りふとただの落書き”と強く言い聞かせよく見ようと近くによっていきました。河本も我に返ったのかカメラのシャッターをきり始め、吉塚も「きみわりー落書きだな」と軽口をいう余裕を取り戻していました。

なんてことのないただの落書きだと思えば多少恐怖心があっても怖いもの見たさである程度余裕はたもてました。

そのほかにはなにもなさそうだったのでその部屋をでようとしたそのときです。振り返った先の扉のある壁に”首の長くそして不吉な表情を浮かべている”絵が一面埋め尽くすようにして何十人も描かれていました。そしてその一つ一つの黒い目はしっかりとこちらをとらえていました。

パニックになった僕たちはもはやもう扉からは戻ることができず、割れかかった窓ガラスを思いっきり蹴破って外にでました。

そして一刻でも早く立ち去りたい僕らは車のとこまで走ってゆき、急いで国道のある道まで車をとばしていきました。

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その廃墟から帰ってきた後、僕たちはネットなどでその廃墟についての情報を調べましたが例の落書きについてはどれだけ調べても出てきませんでした。

しかし河本が取った写真をパソコンでみると例の落書きがそのときは黒いめちゃくちゃな落書きがかかれていたはずの廊下の壁一面にかかれていました。

明らかにヤバい心霊スポットを踏んでしまったようです。

その日は写真のデータだけ消して後は各々自宅に帰りました。

それからというものの壁という壁をみる度にあの落書きの幻覚をみるようになりました。吉塚も河本もその幻覚が見えていたそうです。その幻覚は学校の壁や建物の外壁だったのが、帰り道の塀の壁や家の壁にも現れるようになりまともに学校に行くことすらままならなくなりそのまま休学しました。その間も親に勧められて精神科やカウンセラーにもいきましたが何一つ改善に向かうことなく、そして自称祈祷師に大金を巻き上げられ身も心もボロボロになってゆきついに退学、そして自室にこもるようになりました。今では人の顔があの落書きのように見えてくるようになり唯一それがないネットの画面にのめり込むようになりました。

吉塚は僕が休学している間に、車で壁に突っ込んで亡くなったたようです。ブレーキを踏んだ形跡がなく突っ込んだので自殺だと処理されました。

河本は行方不明になったそうです。後で聞いた話によると、最後に確認できたのが道を大声で発狂しながら走っていく姿を監視カメラがとらえていたというものでした。そして彼の部屋には徹底的に壊された一眼レフが残されていたもののメモリーチップはどれだけ探しても発見できなかったようです。僕のところにも警察が事情聴取にきましたがそのときはすでに人に会える精神状態ではありませんでした。

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あのときからもう数年たちましたがいまだに幻覚が消えません。というよりひどくなる一方です。常にあのうつろで不気味な表情で見つめられています。自室にも入ってくるようになりました。

助けてください

Concrete
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