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短編2
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マチコ

※一部創作。長文です※

よく行くバーに、マチコと呼ばれている男性の常連客がいた。

当時20代後半で顔も悪くなく、話もうまいので、マチコの周りにはいつも人が集まっていた。

ある日何気なくマスターに彼がマチコと呼ばれている理由を尋ねた。

『あー別に深い意味はないよ。

ただ、君は若いから遊ばれないようにね。』

マスターは優しく笑うと私が頼んだカクテルを作りはじめた。

私が店に通い始めて半年過ぎた頃、マチコが声をかけてきた。

『よくきてるよね、この店。』

マチコは私の隣の席に座り、自分がどんな人間か語り出した。

その時の会話はほとんど覚えていない。

私がマチコの話に集中できなかったのは、マスターがじっとこちらを見つめ、話を聞いているように思えたからだった。

ある日街で偶然マチコに会った。

『俺さ、本当はタカヒロって言うんだ。』

『なんでマチコって呼ばれてるの?』

『昔フラれた女の名前なんだよ。みんなにバカにされてんだ。いまだに』

マチコは照れ臭そうに頭をかくと、急に真顔で言った。

『だから二度マチコって呼ばないでくれる?』

別れ際、また話したいからと連絡先を聞かれた。

私はその時携帯をなくしていたので、マチコの連絡先だけを聞いて別れた。

それから仕事が忙しくなり、半年ぶりに店に行ったときだった。

『マチコってまだきてますか?』

私はマスターにマチコに街で会ったこと、その時連絡先を聞いたことを話した。

『客のことをあまり言いたくないが…』

マスターはいつになく低い声で話始めた。

マチコはどこかの金持ちの息子で、仕事もせず金だけ与えられている道楽息子だったそうだ。

マチコはこのバーに来た当初、過去に自分が関わったレイプ事件を自慢げに話していたらしい。

その被害者の名前が

マチコだった。

始まりはわからない。

ふざけた延長で呼んでいたマチコがいつしか定着したという。

『奴の言うことだから本当かどうかわからないし。

最初は不謹慎だと思ったんだが…』

マチコは呼ばれて笑っていたという。

『客としては払いがいいから最高だったが、

人間としては最低だった』

マチコはある日を境に姿を見せなくなったという。

理由はわからない。

ただ、同じように常連でマチコと面識があった客が小さな新聞記事を持ってきた。

『これ、写真載ってないけど、マチコじゃねえかと思うんだよ』

記事は暴行容疑で取り調べを受けていた男性が、留置所で死亡していたという、本当に小さなものだった。

『名前も出てねーのになんでわかるんだよ』

『いや、

《この男性は10年前○○で起きた婦女暴行事件に関与していたことを認めており》って書いてるしさ』

『この記事書いた記者の名前が真知子って言うんだよ。』

誰もマチコの行方を知らない。

その後店もなくなってしまった。

怖い話投稿:ホラーテラー 合法さん  

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