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中編3
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開かずの間

俺の姪が通ってる中学で噂になっている話がある。

開かずの間があって、夜になると中からうめき声が聞こえるとかいうありきたりな話だ。

姪自身もほとんど信じてなかった。

でもこの話を姪から聞いたときに思い出してしまったことがある。

実はこの中学は俺の母校でもあり、俺の在学中にはすでに上記の噂は存在していた。

この噂に関係があるかは分からないが、俺は一度だけ恐ろしい体験をしている。

秋の終わりごろだった。

当時中2の俺はバンドの練習で帰りが少し遅くなっていた。

実際は他のメンバーはすでに帰っていて、俺だけ残ってベースの練習をしていた。

だいたい夜6時ぐらい。

窓の外は真っ暗だが、廊下は蛍光灯のおかげでまだ薄明るかった。

使っていた教室(学校に許可をとって使っていた)に鍵をきちんと掛けたのを確認して、さあ帰ろうと思ったときに、物音が聞こえた。

周りを見回すともう一度「ガタッ」

練習に使っていた教室の隣の教室からだ。

その教室こそが開かずの間として噂になっている教室。

しかし、この噂に対しては否定的だった俺は「どんな奴がこんな薄気味悪い教室を使ってるんだ?」ぐらいの気持ちで俺はその教室に向かっていった。

ドアに付いている曇りガラスの向こう側は真っ暗だった。

あれ?と思いながらドアを開けようとしたが、鍵が掛かっていて開かなかった。

この間にも中からガタッという物音は聞こえていた。

この時点で引き返せばよかったのに、「誰かが閉じ込められてるのかも…」という余計な正義感からか

「誰か中にいるんですか?」

と尋ねた。

返事はなし。

しかもその瞬間から物音が止んだ。

しばらくの静寂。

「気のせいかよ」

と1人ごとを漏らしながら立ち去ろうとすると、曇りガラスの向こう側に何かが見えた。

そして次の瞬間

バンッ!!!

心臓が止まるかと思った。

何者かが青白い手で曇りガラスを教室の中から勢いよく叩いた。

教室の中までは蛍光灯の光が届かずに真っ暗なはずなのに見えてしまう。

まるでそれ自体が青白く光っているかのように。

ここで逃げればよかったのだが、バカな俺は「誰かのいたずらなら逃げたら恥ずかしい」と思ってガラスごしにその青白い手を睨んでいた。

すぐに手は引っ込んだ。

その次に俺の目に入ったのは顔だった。

ゴンッと音を立てながらガラスにへばりついた顔。

曇りガラスなので男か女かは分からない。

ただ普通の人間の物と比べて異常に大きな顔。

さっきの手と同じように青白く光っているかのようだ。

金縛りにあったのか、足が動かない。

さらには目を反らすことさえできない。

自分の心臓の音が聞こえる。

どれくらい時間が経っただろうか。

ふいにその顔が真っ赤な口を歪めてニヤッと笑ったのが見えた。

悪意のようなものに満ちたとても気持ち悪い笑顔。

ふいにポケットの中のPHSが鳴った。

次の瞬間自由になった足で自転車置き場まで猛ダッシュ。

実は自転車置き場から例の教室の窓が見えるのだが、見る勇気はなかった。

それからは学校に1人で残るということは絶対にしなかった。

後日姉(姪の母)から聞いた話だが、姉の1つ上の学年の女子生徒がその教室で服毒自殺したらしい。

それから、その教室は封鎖され、例の噂が流れるようになったようだ。

俺が見たのはその女子生徒だったのか。

それとも別の何かだったのか。

卒業してから10年近く経つ今となっては調べようもない。

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