子供の頃から僕と仲の良かった悟と浩二。
昔家に帰らずに遊び回っていたときにヤクザの木村と知り合った。面倒見て貰って美味しい事もあったので、多少ややこしい仕事も手伝ってはいたが、その時ばかりは本当にビビった。
木村に写真とメモを渡されて、
木村 「コイツ、殺してこい。お前らまだ二十歳になっとらんで、すぐ出られるで、出て来たら面倒見たるし」と。
断ったら逆に殺されそうな勢いで詰められたので写真とメモ、帰り際に渡された工具箱を持って3人で悟の家に帰って来た。
僕 「どうやって断る?警察に言うか?」
悟 「飛ぶか?でもばれるわなぁ」
と凹んでいると、
浩二 「俺がやるわぁ。どっち道ただじゃすまんやろしなぁ」
と言い出した。工具箱の中には、携帯、印の付けてある道路地図、両刃になっているでかいナイフ、後は意味不明だがノミ、トンカチ、まな板が入っていて浩二は道具をしまいまた木村の会社(組事務所)に戻って行った。
その後、目標を達成した浩二はすぐに逮捕された。15年出られないと聞いた時、止めなかった事を後悔した。僕と悟は19歳だったが浩二は二十歳になっていたのだ。
その後の僕らは正月は年賀状、夏は暑中見舞い、会える時は面会も行っている。もう30歳になる僕と悟は真面目に会社勤め、家族を食わすのに必死で働いている。浩二も塀の中から会社が決まった時、結婚した時、家族が増えた時は心から祝福してくれた。
浩二 「後5年、出たら俺も一人前の極道やで。俺にはこれしか無いし」
といつも言っている。
僕と悟を守るために自ら手を汚し、今もその真っ直ぐさは変わらない。たとえ塀の中でも。でも10年、世の中は変わっていく。
ヤクザの木村は破門されて行方不明(タクシー運転手をやっているのを見たと言う人もいる)。木村の居た組も事務所引き払って今はマンションがそこに建っている。聞いた話では組自体もう潰れていて存在しないらしい。
僕と悟は、浩二にその事を言えずにいる。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話