短編2
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必ず幽霊が見れる場所

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Mさんから聞いた話だ。

Mさんは怪談が大好きで、本や映画は勿論のこと、心霊スポットにまで行ってしまう人だった。

そんな彼だが「霊感」は全く無いらしく、有名な心霊スポットに行っても幽霊や怪奇現象に出くわしたことがないんだそうだ。怖がりな私は本や映画で満足するタイプなので、実際に幽霊を見たくはない。しかし彼はこの目で実際に見たいと言い、異常に執着していた。だから必ず幽霊が見れるという心霊スポットには何処であろうと足を運ぶ人だった。

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ある時Mさんは友人のOさん、Cさん、Eさんと居酒屋で飲んでいる時にOさんから、必ず幽霊が見れる場所があると聞いた。この4人はよく心霊スポットに行くグループで、この日もお酒を飲みながら怪談の会を開いていたらしい。私も何度か参加させてもらった事があるが、主要のメンバーはこの4人だった。必ず幽霊が見れる場所というのは何の変哲もない田んぼの畦道で男がぼうっと立っているらしい。絶対に行く!と乗り気のMさんは早速その晩4人で現場に向かった。

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街灯がぽつぽつと立っている寂しい田んぼ道を進むとOさんが「ここだ」と車を停め、「こっから見てみ」と車から降りずに窓の外を指差した。

助手席に座っているMさんがぼんやりと見える畦道に目を凝らすと、確かに男がぼうっと立っている。

「うおっホントじゃん!遂に見えたわ!」と興奮するMさん達を見て、Oさんはクスクスと笑い始めた。

「えっ何かおかしいか…?」

「いや、アレね、実は幽霊じゃないのよ。見える理由があんの」

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そう言うとOさんは車を少し動かして、「もっかいさっきの所見てみ」と言った。言われたとおりにMさんが目を向けると例の男は忽然と姿を消した。

「いなくなった!」とMさんが叫ぶと、Oさんがネタばらしを始めた。どうやら街灯と電柱が生み出す影が見る角度によって突っ立っている男に見えるらしく、これを使って皆に悪戯してやろうとOさんが企てたものだった。

「何だよ、幽霊じゃないのかよー」と落ち込むMさんを見て、Cさんも「俺も騙されたわ、騙したからOの奢りでもう一軒な」と、Oさんの奢りで飲み直すことになった。

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二軒目に入って暫くすると先程からずっと黙っていたEさんが口を開き、こう言った。

「さっきの田んぼの男の話さ、マジで嘘なの?」

どういう意味だとOさんが尋ねると

「ある角度からしか見えないって言ってたよな。俺、黙ってたけどずっと見えてたんだよ。ぼうっと立ってる男。Mがいなくなったっていうから、見えてんじゃんって言おうと思って、やめた。」

だって言ったらパニくっちゃうだろ、とEさんは暗い顔で呟いた。

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「という訳でやっと本物の幽霊が見えたんだよ」とMさんは嬉しそうに語った。今でもMさんは心霊スポット巡りをしているらしいが後にも先にも幽霊を見たのはこの時だけだったそうだ。

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