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短編2
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磨りガラス

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私の家の台所と居間を隔てる雪見障子と風呂場の引き戸は磨りガラスで出来ており、向こう側がぼんやりと透けて見えるのだが、2ヵ月ほど前から居間の方から台所の方を見ると磨りガラス越しに誰かが立っている。それは髪の長い女のようで、私の家族には髪の長い女はいない。

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最初は姉の友人かと思い挨拶をしようと障子を開けると誰もいない。不思議に思って家の中を探したがそのような人物は見当たらず、気のせいかと居間に戻ってテレビを観ていた。しばらくすると喉が渇いたので台所に行こうと障子の前に行くとやはり向こう側に誰かいる。

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素早く障子を開けたが誰もいない。もしかしてと思い閉めてみると磨りガラス越しには見える。何か行動を起こす訳ではないようでピクリとも動かない。これで顔を近づけてきたりゆっくり障子を開けてきたらどうしようとビビっていたが、何もしてこない。

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何度か開けたり閉めたりを繰り返して確認してみたがやっぱり閉まっている状態の磨りガラス越しにしか現れないようだ。そんなことをしている間に私は次第に恐怖心が薄れ、逆に好奇心が出てきた。反対側、つまり台所から居間を見たら居間の方に移動するのかと思い見てみるとこれが不思議なことに台所からは見えない。もう一度居間に戻って見ると見える。

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どうしようもないのでその日はそのまま寝たが、次の日もその次の日もそいつはいた。別に何かしてくる訳ではないのでそのまま放置していたのだが、ある日その女をずーっと眺めていると身体をゆっくり左右に揺らし始めた。なんだかずっと見ていてはいけない気がして私はそいつを見るのをやめた。

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そしてこれが関係あるのかはわからないが、ついこの間風呂場の電気が点いているので「誰か入ってる?」と聞くと「はぁーい」と母でも姉でもない間延びした女の声が返ってきた。驚いて風呂場を見ると磨りガラス越しに誰かいる。その時はかなりビビってしまって家族のいる居間に飛び込んだ。よく考えると家族全員居間にいたので、誰かが風呂場にいるのはおかしい。後にも先にも風呂場での怪異はこれきりだったが台所にいるあの女と同一人物なのかは未だにわからない。

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そして困ったことに磨りガラス越しに見えるあの女は今もまだそこにいるのだ。

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