短編1
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お経の力

金縛りだ。

重い。苦しい。動けない。

今は深夜2時を回った頃だろうか。

目を開けたくても開けられない。

俺は確かに目覚めているのに。

声も上げられず、ただ何かにのしかかられたような重みを感じながら、

俺は少しでも動いてやろうと力を入れる。

声だけでも出せれば、いずれは金縛りから解放されるのだが。

ようやく、うめき声にも似た声を出す事ができた。

そしてまぶたも少しずつ開いていく。

俺は目を疑った。

乱れ髪の老婆が、俺の上に乗っているではないか。

両腕で俺の方を押さえつけ、凄まじい形相で俺を睨みつけている。

俺はこんな老婆を知らない。

なぜ俺を怨んでいるのだ!?

「南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経」

俺はひたすらお経を詠んだ。

「南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経・南無妙法蓮華経」

すると一瞬、老婆はのけぞったかと思いきや、

俺の耳元まで口先を近づけ、こう言った。

「お経なんか詠んでも、無駄だよ」

怖い話投稿:ホラーテラー 伴 輝真さん  

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