まず前置きとして
元々私は昔から 自分自身が本人目線で登場する夢を見ることが多く 目が覚めてからも夢の内容をほとんど覚えていました。
こういった夢は、自分で夢だと自覚しながら見るのですが、最初から夢だと気づく場合と、途中から気づく場合があり、気づいた瞬間から 『へぇ!こんな展開もあるんだ!夢ってすごい。』と、現実?の自分が思う感覚もあります。
そして自分の意思で自由に動けるのですが、現実と同じで 空を飛んだり瞬間移動することは出来ません。
転べば血も出て痛いし、匂いもちゃんとします。夢の中でもすべてがほぼリアルなのです。
※説明が下手でわかりにくかったらごめんなさい。
本題に入ります。
この日も突然、大きな窓から夕焼けのオレンジ色が降り注ぐ建物の中に佇んでいました。
今回はすぐに (あ、これは夢だ) と最初から気づくパターンです。
よく見渡してみると廊下に立っていて、見覚えのある教室や窓から見える景色から (あぁ、ここは自分が通っていた中学校の校舎の中だ) と思いました。
懐かしいなと思いながら、まず自分の今の状況を把握します。教室は3-1から3-3まであり、自分は真ん中の3-2の教室前に居ました。
中学の制服は着ておらず、現在社会人となった自分の私服姿ですが、足元は上履きという変な組み合わせが妙に浮いていました。
シンと静まり返った夕方の校舎に1人きり。
聞こえるのは自分が動くとキュッキュッと鳴る上履きの音だけでした。
なのに少しも怖いと思わなかったのは夕焼けがキレイで明るさがあったからかもしれません。
夢だとわかっていたし、知っている学校ということもあったので、今回はどんな夢なんだろうとワクワクしながら校舎の中を歩いてみることにしました。
そのまま廊下を進むとL字廊下の手前、女子トイレと男子トイレがあります。
配置も通っていた中学校と変わりありません。
何故かここに来てすごい寒気を覚えました。ブルッと体を震わせると同時にちょうどトイレに行きたくなったので、ごく自然にその女子トイレのドアを開けました。
開けた途端、この夢は絶対やばいと思いました。
作りは学校のトイレと変わらないのに、中は小さい窓があっても夕焼けの光は一切入らず 暗く古い感じで、臭いも公衆便所のように酷いものでした。
さっきの懐かしい雰囲気はもうどこにも無く、知らない光景。
ここだけ別世界でした。
入ってすぐ右には鏡と手を洗う洗面台。何故か洗面台の鏡は欠けてもないのに、バリバリに割れた鏡の破片が大量に下に散らばっていて、左にはモップなどが入っている掃除用具入れが開けっ放しです。
トイレは左右に2つずつ和式の便器があり、すべてのトイレのドアは誰も入っていなければ空いているはずなのに、左奥の1つだけ閉まっています。
中に誰か居る。
寒気が一気に押し寄せて鳥肌が止まりません。
ここに居てはいけない。
夢だとわかっていても震えるほどの恐怖を感じました。
ふと気づくと細く歪な音が聞こえてきます。
左の閉まっていたはずのトイレの扉が少し開きはじめているのです。
歪な音は錆びた扉を開ける音のようでした。
やばいやばいやばい。
頭の中で警報が鳴り、心臓は周りに聞こえそうなほどバクバクいっています。
なのに、その扉から目が離せず一歩も動くことが出来ませんでした。
もしそこから目を離したら殺される。
でも中に居るソレと目が合っても殺される。
何故かそれだけはハッキリわかりました。
これは夢! 目が覚めれば大丈夫。早く目を覚ませ! と心の中で祈り続けましたが、まったく覚める気配はありません。
それでも夢だとわかっている私は頭のどこかで (こういうのは怖い話によくある展開) だとも思っていました。
この状況で余裕があったわけではないですが、どんなやつが出てくるのか、最大限怖いものを想像して身構えればきっと大丈夫。
現実の私が知り得る限りの恐怖が 今自分の見ている夢には越えられないと考えていたんです。
不気味な音を立てて少しづつ開く扉。
暗いはずなのに、半分ほど扉から覗いたソレを見た瞬間に心臓がいっそう跳ね上がりました。
私は目を直接合わせないように視線はソレの顎あたりを見ていたと思います。
口は裂け、顔の皮膚はグチャグチャとしか表現出来ないほど崩れ、血生ぐさい臭いが鼻を刺激しました。
服はまさに花子さんみたいな白いブラウスに赤いスカートのようでしたが、、、ボロボロの生地で破れた腹からは臓物が垂れ下がり 全体的に服は黒ずんでいます。
その染みがすべて乾いた血液なんだと思った瞬間
頭の先から足の先まで冷たい感覚が走りました。
冷や汗が流れてくる不快感も。
目の前の実物は、私の恐怖の想像を遥かに越えていました。
夢なのに本当にすべてがリアルです。
その時、右に影が横切る感じがしました。
あれほどソレの姿から目を離してはいけないとわかっていたはずなのに、咄嗟に目を離し どういう訳か洗面台の鏡を見てしまいました。
すると耳元で甲高い あははははははははっ!と笑う声が響き、突然鏡に映ってきたソレと目が合ってしまいました。
身体が跳ねるくらいビクッ反応し、ガチガチと自分の歯が鳴る音がしました。
そして『もう逃げられない』と頭の中に聞こえた気がしました。
すぐ目を反らしたいのに、見たくないのに、あまりの恐怖にまた動けなくなってしまったのです。
まじまじと見てしまったソレの顔。
眼球は飛び出しそうなほど突き出ていて、丸々全部見えたので目蓋はなかったように思います。
頭は頭蓋骨が陥没しているのが、いびつな形に凹んでいて、真っ黒い髪の毛は所々抜け落ち、生えている部分は肩までのボブになっているものもありました。
あの花子さんを全体的にもっと更に酷くしたような容姿です。
ソレはすでにトイレの中から移動していたんです。鏡に映っているというより、鏡の中に居るようでした。
それなのに笑い声が耳元でしていることと、背後にただならない気配を感じていたので、本体はたぶん私の後ろにいるはずです。
いつ発狂してもおかしくないほどパニックになりました。
それでも大声で叫べなかったのは、声を出したら二度とここから動けずに座り込んでしまいそうだったからです。
ここには居ちゃいけない。早く逃げなきゃ。
もう目が合ってしまったからには、逃げることが最善策だと思いました。
真後ろの気配がするものを直接見ないように気をつけながら踵を返すと、私は一目散に階段の方へ走り出しました。
あいつが背後にいる。追いかけてくる。殺される。 今までにこんな怖い思いをしたことはないです。
夢では走ろうと思えば走れるものの、現実より早く走ることはできません。
必死に階段を降りました。とにかく校舎から出なくては。と、それしか考えられませんでした。
追いかけてくる足音は聞こえない。でも 笑い声は後ろから一定の感覚、すぐ近くでするのです。
死に物狂いで走りました。
心臓は相変わらずバクバクいっているのに、走ることが加わって息が思うように出来ません。
叫びたいのにヒュッと息を吸うことが精一杯でした。
階段も何段か飛ばして降りますが、焦っているので階段を踏み外してしまい 少し変な方向に足首を捻ってしまいました。
現実の感覚と同じく しっかり痛くてまたパニックになりました。
でも止まったらきっと終わり。
夢が終わりなのではなく、殺される恐怖を永遠と味わうことになる。
もうぐちゃぐちゃに泣きながら必死に走りました。
どれだけ階段を降りたかわかりません。
私が居たのは三階なので、すぐ一階に着くと思っていました。
それなのに、とても長い時間。。。何十分もかかった気がします。
そしていつの間にか後ろの笑い声が聞こえてこないことにも気づきました。
それでも全身のゾクゾクする寒気はまったく消えませんでした。
今ソレはどこに居るのか、本当に私のすぐ後ろにいるのだろうか?
もしかして逃げることが出来たんじゃないか。
階段を走って降りながらも、ほんの少し振り返ってみようか?と思ってしまったのです。
バカみたいですが、ソレの居る場所がわからないより、姿を確認した方がまだ安心できるような気がしたからです。
この時も頭のどこかでは絶対振り向いたらダメ。と警報を鳴らしていたにも関わらず、やっと階段の終わりが見え、さらに一階の校舎入り口のドアが開いていることを目で確認しました。
それに油断したんだと思います。
走りながら少しだけ振り返ってしまいました。
shake
ァハハハハハハーーーー!!
すぐ目の前にソレの顔があり、嬉しそうに裂けた口を大きく開けたかと思うと、またあの笑い声が耳元で響き渡りました。
ソレはずっと真後ろに居たのです。
目線を合わせた高さに浮いた状態でした。
やだやだやだやだやだ。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。
自分の耳にソレの笑い声が届かなくなるくらい初めて叫びました。
鼓膜がキーンと痛くなるくらい。
それでも足は止めず、足首が痛いのを堪えながら必死に走りました。
何故か校庭に出ると明るい日差しが出ていて夕焼けなんてありませんでした。
薄暗さもまるで無く、太陽が輝き青空が広がっています。
助かった。
そう思いました。
青空を見て恐怖感も若干和らいだのです。
それでも必死に走りきり 校舎の出口の門を出るまであと一歩という瞬間
後ろから肩をグイっと掴まれました。
もう少し、もう少しで学校を出れるっていうのに、ここまで来て捕まってしまった、、、
耐え難い絶望感襲われ、また心臓が破裂しそうなほど痛く締め付けられる感じがしました。
横目に見ると、剥がれた爪がブラブラしている血塗れの手が肩にかかり ありえないほど強い力で握られているようです。
ヒィッ!と悲鳴が自分の口から漏れました。
夢とわかっているはずなのに本当に死んでしまうというリアルさがありました。
嫌だ。まだ死にたくない。
夢だろうと死が間近に迫っている感覚は現実でも味わったことのないほどの恐怖です。
もう倒れこむ勢いで最後の力を振り絞って門から一歩外に飛び出しました。
出た瞬間、さっきまで肩を掴まれていた感覚はパッと消えていました。
荒く乱れた呼吸を整えながら、(またさっきみたく振り向いたらソレがいるかもしれない) という緊張で動けずにいました。
もう一度正面からあの顔を見る勇気はありません。
しばらく経っても何も起こらないようだったので、這いつくばって更に道路に出ました。
外に出ても生き物は私以外いないようでした。
車も自転車も通ることもなく、猫や犬もいない。
生活音が何も聞こえない。
誰にも助けを求められない状況でも 唯一、青空だけが安心感を得られるものでした。
たぶん、これがどこまでも続く闇だったら私は確実に発狂していたと思います。
やっとどうにか落ち着いてきて、大きく深呼吸をしました。本当に助かった。と今度こそ思った時
後ろの校舎からあの笑い声が聞こえました。
私は校舎の方に振り向きました。
振り向いたのは 笑い声が遠くから聞こえたことと、気配も消えていたし もうソレが真後ろにはいないと思ったからです。
やはり見覚えのある中学の校舎に見えるのですが、三階の窓からソレの姿が見えました。
真後ろではなくても呼吸が止まりそうなほど怖い。けれど、そこに居るということは私が助かった確信でもありました。
よかった。あれはきっとこっちまでは出てこれないんだ。
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次に気づいた時には目の前が真っ暗な闇でした。
目は開いているはずなのに何も見えません。
私の呼吸は荒く、さっきまで体験したことがまだ鮮明で これは夢の続き?と構えて体が固まり力が入りません。
しばらく視線だけキョロキョロ動かしていると目が暗闇に慣れて、今ここは自分の寝室で私は仰向けになっていることを理解しました。
どうやらあの夢から目を覚ましたようでした。
これは現実だ。
戻ってこれた。
心臓は相変わらず早く大きくうるさいし、もう夢から覚めたのに体の震えが止まりませんでした。
とにかく電気を付けて落ち着こうと、ゆっくり体を起こしました。
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ゆめはわったはずなのに あのわらいごえが またみみもとできこえて こわいこわいこわいこわいこわい やだよ しにたくない たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて
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こんどはにがさない
作者mame