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中編3
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盛り塩

今から5年前の8月に体験したお話。

当時大学生3年生だった私のアルバイトはホラー映像制作。

そんなアルバイトどこで見つけるの?と度々聞かれるが

映像系の大学に通っていた為、映像に関する様々なジャンルのバイト話が先輩経由で回ってくる。

私も先輩経由で始めた1人。

バイト内容は至ってシンプルで、3〜5分程の映像素材を月ノルマ2本納品すること。

ストーリー企画、演出、演者や撮影場所の確保から撮影までを単独で行い、素材を編集マンに渡すまでが私の役目。

前置きが長くなってしまったが、今回はロケハンで埼玉県越谷市の廃墟に行った時のお話。

元々その日は秩父市にある山道沿いの廃墟で撮影の予定だった。出発前に交通情報を確認したところ、崖崩れの影響で山道が通行止めになっており予定変更。

空いた1日は大学の課題に充てようと思っていたが、

Twitterで情報提供のDMをいただいた。

当時で既に100以上の廃墟、心霊スポットに訪れていた私は、撮影場所の駒を増やす為SNSで情報提供を呼びかけていたのだ。

頂いたDM相手は卵マークの捨て垢で、内容は住所の記載のみ。一応ストビューで確認してみたところ中々映像映えしそうな戸建ての廃屋で、場所は埼玉県越谷市に位置していた。

しかし、このレベルの廃墟なんて全国ごまんとあるので、バックボーンやストーリーが必要だ。そこを企画するのが私の役目。

ただ、やはり地元で都市伝説化している廃墟が1番手っ取り早いのも事実。既にお話ができているので…

頂いた廃屋の追加情報を貰うため返信しようとしたのだが、既にアカウントが削除されていた。

この時点で行くことに決めた。

たまたまTwitterで肝試ししたいと呟いている友人を見つけたので、彼ともう1人誘い、計3人で向かうことに。

廃墟近くのコンビニに車を停め、あくまでロケハンのため懐中電灯のみで廃墟へ向かうことに。

目的の場所は住宅街に位置しており、街灯も少なく、騒ぐと通報されかねないので、そこは口酸っぱく友人に警告した。

しかし、肝試しとなると平常心でいられないのが人間。

住宅街に入り、正面突き当たりを右に曲がってすぐが目的の廃墟なのだが、曲がり角に築50年は経過しているであろう古民家が建っていた。

表札がなく、雑草が生い茂っていたので、私の経験からしても間違いなく廃墟だと思われる古民家だった。

しかし、不思議なことに玄関前に盛り塩がされていた。

こんな家に誰か住んでるんだなぁと思ったその時、

友人の1人が盛り塩を蹴り上げた。

路上に塩が散乱し、罰当たりなうえ器物破損に当たると思ったので友人に注意するが、大丈夫大丈夫と聞く耳を持たない。

ここで説教していても仕方ないので、さっそく右に曲がると肝心の廃墟は既に取り壊され、更地と化していた。

まぁ廃墟が更地になってるなんてのはよくあることで、

友人に不満を言われるが仕方ないので引き返すことに。

来た道を戻るため再び角を曲がった時、3人で固まった。

友人が蹴り上げ散乱した塩が一切ない。

この日は風もなかったので飛ばされたということもない。

そして、蹴り上げたはずの盛り塩が綺麗に再び盛られていた。

盛り塩が散乱してから時間にしてわずか30秒ほどの出来事。

車内に戻り、友人が蹴り上げた方の足を確認したのだが、親指の爪が縦にぱっくり割れていた。

この盛り塩が何を意味していたのか分からないが、

罰当たりな行為だったのは言うまでもない。

この古民家も既に解体済みだ。

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