俺はかなり特殊な体質だ。
霊感が強い。
訳では無く、
見える人。
でもない。
圧倒的に霊感が強い人や、見える人に遭遇しやすい人なのである。
その中でも群を抜いて見える。いやもう、見えすぎて意味が分からない人と遭遇した話。
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十数年前、俺がまだ女遊びに現を抜かし、端的に言えば人生余裕と調子に乗っていた絶頂期の頃。
その女性と出会った。
まだまだ残暑が続く9月の中頃。
浮かれた若者が夜な夜な自慢の爆音カーでナンパに明け暮れてた光景を他所に、俺は美人で有名な二人組をたった一人でエスコートしていた。下心全開である。
二人同時は流石に経験がなく、有名な二人組を同時に成敗したとなれば、そりゃーもーレジェンド扱い間違いなしだろうと張り切っていた。
もう性欲とかではなく、それが成功するかどうかの方に躍起になっていた。
二人組の美女は心霊スポットドライブでもしようよー。等と言う。しかし、難しい所である。
ここらで心霊スポットといえば、市街地から離れた海岸沿いか、山深い僻地にしかない。いわゆる、そういうホテルがある場所とは程遠い。
ただ、焦ってはみっともない上に、警戒されるのも嫌なので一旦海岸沿いのスポットに向かうことにした。
「ねぇねぇ、もう30分くらい経つしぃ、そろそろ助手席交代してよー。」
「えー?早くない?もっと□さんとお喋りしたいし。」
「後ろで一人とか、マジ寂しいんやけどw」
すまない…。俺が二人いればな…。
しかし腕は2本ある。もう少し我慢するのだ美女達よ!
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っと、アホなこと考えているより、まずは人物を説明しておこう。
まず後部座席に座っているのはユキ。誰が観ても色白の美人だ。石原さとみ風でいて、もうちょっと甘い感じにした容姿。
そして助手席に座っていた美女。レイミ。
因みにどちらかと言えばこの女性が本命で、今で言うと清野菜名そっくりであった。笑うと目が無くなる感じ。
あ、勿論良い意味だ。
即告白したくなる程、好みで可愛かった。
そして、このレイミが我が生涯最強の見える人であったのだ。
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shake
「ちょい待ち!!!!」
突然レイミが声を上げた。
流石にビビった。久々に心臓が千切れるかと思った。いやもう、少し千切れた。痛い。
「ちょっと車停めて。」
レイミは少し焦っていたようだったので、俺は速やかに停車した。
「ごめん、50m程戻ってくれる?」
レイミは申し訳なさそうに言った。俺は「お、おう。」とか平静を装ってはいたが、心臓がさっきの驚きでバクバクと鳴っていた。Tシャツが鼓動と共に振動しているのがバレるのを恐れ、不自然に上半身をくねらせていた。
少し車を戻した所、レイミは目を細めて窓の外を凝視した。
「あー…。やっぱここら辺、いるねぇ一杯。」
何が?
何が一杯?
もしかして、オバケ的なやつが一杯見えてるの?
俺は緊張した。
すると後部座席のユキが。
「はぁ、始まったよ。」とげんなりとしだした。
「始まったとは?どゆこと?」
ユキに問うと、「レイミはかなり見える人で有名なのよ。」
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緊張と共に興味が湧いた俺は
「レイミちゃん。何が見える?オバケでもいるん?」
と然り気無くレイミの肩越しに顔を近付けた。
「めっちゃいる。やっぱ夜は海沿いに集まるんやなぁ。」
ゾッとした。集まるってそんなに沢山いるのかよ。
かなり嘘臭いけど本当ならマジで洒落にならない。
幽霊1体でも恐ろしいのに、一杯集まってるって。
半信半疑ながら
「へ、へぇー…。どれくらいいるん?」
「えーっとねぇ…。20は軽いかな。」
20体!?
普通の数じゃねーだろ。
もはやウソ臭い、笑えるレベルだ。
この子めっちゃ可愛い顔して、可愛いウソで場を盛り上げようとして、
もー大好き。
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「めっちゃいるわー。妖精。」
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?
??
何て?
ようせい?
養成?養成された生き物?
養殖?
理解が追い付かない。
幽霊ではなく、ヨウセイ?
ユキ「かー、今日はそっちかぁ!」
何だ?どっち?そっち?
妖精って、妖精か?ティンカーベル的なやつがウジャウジャいるのかよ。
レイミ「日中は街中で見掛けるけど、夜は見掛けないから、やっぱり夜間は移動して集まってるんやなぁ。」
ユキ「凄い進歩やん。前からレイミ気にしてたから。解って良かったね!」
二人の会話がいまいちピンと来ない。ポカーンとしていた矢先。ユキが言う。
「あ、ごめんごめん。レイミってさ幽霊とかめちゃ見えるんやけど、守護霊とか妖精も見えるんやってさ。」
凄い見えるね!
レイミ「あ、この前鬼が空飛んでるのみたよ。」
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鬼。
オーガですか。
よし、質問をしよう。分からない時は質問をする。
ガッコのセンセが教えてくれた!
「レイミちゃん。妖精や鬼ってどんな見た目なの?どういう風に見えるの?」
レイミ「幽霊も妖精も鬼も割りとハッキリくっきり見えるよ。そして幽霊の場合……。」
近くの休憩所に行き、自販機で飲み物を買ってゆっくり話を聞いた。
レイミが言うには、幽霊は勿論妖精も鬼もハッキリ見えるらしい。そして幽霊は血ミドロなのは有り得ないらしく、そんなのは見たことがない。いないらしい。
絵を切り取った様に顔の半分が無かったり、身体が半分無かったり、欠損しているのが殆どで、赤い血の付いている感じはないらしい。
妖精は30センチ位の身長で、街中の植木や街路樹、お花のそばで座っているのを見掛ける様だ。
妖精にも老若男女があるらしい。顔は日本人のそれに似た系統であると。
そして鬼だ。鬼がいるのだ。レイミ曰く。鬼は本当に激レア星6くらい貴重で滅多にお目にかかれないらしい。
レイミ自身も人生で3度程しか見ていないという。
いや、鬼3回しか見てないって、もはや感覚が崩壊している。
普通は見ないのだ。
ハッキリ言って信じることはできない。
幽霊が見えるってだけでも、正直半信半疑なのだから。
レイミが目を細めて言う。
可愛い。
「あ、信じてないやろぉ。」
自分で目が泳ぐのがわかった。
信じてないし、可愛いから。
「えーっとねぇ。じゃあ言おうかな。」
何をだろう。可愛い。
「今日私らが□君に着いてきたのは、ユキはどうかしらないけど、私は□君にスッゴい興味があったから!」
ありがとーっ。可愛いっ。
「だって□君、何か不思議なオーラしてるんだよ。知り合いの預言者と似ているというか、普通じゃないの。」
何かちょっと、怖くなってきたんだけど。可愛いけどね。
「私オーラも守護霊も見えるのね。□君ってさ。運命変えたことあるよね。もしくは、変えられたか。」
何を言っているのかよく分からないが。オーラや守護霊も見えるなら聞いてみたい。
「俺の守護霊って誰?どんなの?」
レイミは続けた。
「オーラがね。二種類あるのね。普通は一種類。□君は二種類が重なってる状態なの。運命が別れる事が今後あって、それに自分が気付いていて準備している?そんな感じ。」
「守護霊は…。蛇?なのかな?でも私に優しいから何か嬉しいよー。」
話を聞いてハッとした。俺は4、5年前にイタズラか事実はかは分からないが、謎のjkに35歳で死ぬかもしれない事を仄めかされている。それの事だろうか。
それに蛇、これに関してはまぁ、妥当と言うか。
虫とか変なオッサンよりかましで、少しホッとした。
何だかんだで明け方まで話し込んでその日は解散となった。
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後日、レイミから電話が掛かってきた。
「□君。突然だけど、今週末空いてるかな?」
安定の可愛さ。
不甲斐ない。何故俺から誘ってあげれなかったんだろう。
ちょっと格好付けて返事をしよう。
「いや、レイミちゃん。まった。俺から誘わせてくれ。
今週末、よかったら俺とデートでもいかない?」
決まった。男から誘うこの男らしさ。
「ん?デート?違うよ。□君と私の知り合いと3人でお話したくって。その人、預言ができるの。よく当たる占い師とも言う。□君のオーラが超絶珍しくってさ、二人で鑑賞会したいなぁって。」
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俺のオーラの鑑賞会。何だろう。
超新しいジャンルである。
俺には見えていない俺のものを鑑賞する会。
ドMだったならば、新スキルと新たな快感に酔いしれること請け合いだが。
俺には敷居が高過ぎる気がする!
そんなこんなで、その占い師もまたとんでもない見え方をする人だったが、それはまた次の機会に。
今はもう十数年前。見えすぎる我が妻との出会いの話でした。
作者オリオトライ