花子さんはイタズラが大好きです。
今日も花子さんは、トイレに肝試しにやってくる子供達を脅かそうと、トイレで待ち構えていました。
バタン!
トイレの入り口のドアを開け放つ音。
…ギギッ
…キュッ
…ギギッ
ギィー、バタン
いつもの上履きやスリッパとは違う足音がします。
…ギギッ
…ギギッ
ギィー、バタン
一つ一つのドアを開けながら、何者かが徐々に花子さんの個室に近づいてきました。
花子さんは身構えながら、息を殺して待ちます。
そして…
…ギギッ
…キュッ
ギィー
遂にドアが開け放たれました。
『えっ!?』
飛びかかろうとした花子さんが目にしたものは、初めて見る光景……。
車イスに乗った少年は、花子さんを見つけるなり、
「みーつけた!」
とてもうれしそうに笑うのでした。
いつもの子供達なら、みんなビックリして逃げるはずです。
『…わたし、怖くないの?』
「うん。花子さんを見つけたら、みんなが友達になってくれるって約束してくれたんだ。だから。」
『友達?』
「そう、クラスメイト。僕ね、階段から転げ落ちちゃって足が不自由になってね、でも強いところ見せたくてみんなと約束したんだよ。」
『…そう。』
「でも、ありがと!これでみんなが友達になってくれる。ママが心配してるから、帰るね!」
『…うん。じゃあね…。』
少年は振り返り、言いました。
「花子さん、友達になってもいいよ!」
『…わたしは…いらない。』
「そっかぁ、残念。」
少年は首をかしげると、器用に車イスを操作しながら去っていきました。
花子さんは、気付いたのです。
最近、トイレで子供達が噂をしていた少年が彼であることを。
階段にワックスを塗り、いじめられっこの少年を階段から滑り落としたこと。
先生達は、本人の不注意ということで事故として揉み消したこと。
人間の友達なんか、イラナイ……
人間なんか……
数日後…
放課後のトイレから
話し声が聞こえます。
「ねぇ、ねぇ聞いたぁ?あの子、突然歩けるようになったんだって!」
「え〜!?じゃ〜また、いじめなきゃ、だね(笑)」
会話に夢中の少女達は気付いていませんでした。
後ろのトイレの個室のドアがそっと開いたことに…。
怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん
作者怖話