五年ほど昔の話ですが投稿します。長いです。
当時僕は何事もうまくいかず、軽い躁鬱病のようになっていました。
その夜も衝動的に自殺を思い、死に場所を探しに近くの森へとフラフラと出かけたんです。
その森はかなり広く、自殺の名所でもあり、よく身元不明の死体も見つかるようなところでした。なので、そこの管理人は自殺者を出さないように厳重に見回りもしていました。
たまたま見回りのスキをぬって森の中に入ると外から見るよりも開けていて、遊歩道のような小道が幾つもあったのを覚えています。
その中の一本を当てもなく少し歩くとあったんです。
死体が。
向こうを向いてはいましたが一目で死んでいると分かるぐらい首が長く伸びていました。そして血まみれに見えるような上着を着ていたのがまた不気味さをかき立てていました。
今見ると動揺してしまうのでしょうが、あの時は
「あぁ俺もあんな風になるのか…」
程度にしか感じませんでした。
そしてそれを尻目にもっと奥の方に行くと円形に木の無い開けた所に出たんです。その広場の隅には2〜3m程の岩が3つ重なるようにしてありました。引きつけられるようにそばに行き、精神的にも肉体的にも疲れていた僕は気がつくと、その岩にもたれかかるようにして寝てしまっていました。
時間にして2時間ほど寝たのか、寝る前は傾いていた月が真上にあり、その広場を明るく照らしていたのです。
そして明るくなった広場を見ると辺りに白い石のようなものが大量に落ちているのがわかりました。
不思議に思い、大きなものを数個手に取ると、それらは一つにくっつけることが出来て、標本模型で見たことのある、足の骨の形になったんです。
おびただしい数の骨…どう考えてもひとり分じゃない…その事を理解すると今まで麻痺していた恐怖心が沸き起こってきました。
その時、自分の正面の草むらが鳴り始め、人影のようなものが見えました。瞬時に岩陰に身を隠して、その揺れている草むらを凝視しているとその人影のようなものが出てきたんです。
月明かりに浮かび上がる姿はまさに昔話に出てくる山姥のようでした、髪はボサボサで顔を隠し、ボロボロの服を着て、右手には鉈を、左手には何か塊を持っていました。唯一、昔話と違うのはボロの上に真っ赤なフリースを羽織っていたことでした。
怯えて声も出せない状態の僕には気づいていないようで、その山姥は広場の真ん中で焚き火をはじめました。
何か焼いて食べはじめ、途中で辺りに何かを捨てていました。
どっかであの赤いフリースを…
全てを理解した瞬間僕は駆けだすしかありませんでした。
道無き道を走り続けて外に出れたのは全くの偶然でした。
そして後日噂に聞いたのは、あの森は自殺者が減ってきているということ。代わりに行方不明者が増えているということだそうです…。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話