短編2
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それ

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これは私が学生だった時の話

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長期休暇中で バイトも休みだったので

借りてきた映画を2階にある部屋で 

雰囲気を出すためにカーテンを閉めて見ていた

 

1月も半ばでまだ気温も低く、

飼っている猫は膝の上で丸くなって寝ている

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2、3本と映画を見ているうちに

うつら、うつらと

居眠りをしてしまったようだった

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気が付いたときには

もう16時を過ぎた頃だった

「うわ、結構長く寝ちゃってたなぁ」

休日を無駄に過ごしたのを後悔していると

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テレビの左側にある窓のところ

それは居た

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カーテン越し 夕焼けの茜に照らされた姿は

揺れ動く黒い影としてしか判別できない

私はそれを猫だと思い ご飯用意しないと、と

寝ぼけながら立ち上がった

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ーーーーーザッザッザッ

何かを擦るような音が聞こえる

音のする方を見ると、猫が

背後にある爪とぎを引っ掻いていた

なにかがおかしいことに気が付くのに 時間はかからなかった

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振り返ってカーテンをみると

まだ "ソレ" はそこで揺らめいていた

大きさは猫程度だが、それにしてはなにか違う

そうだ、これは人のーー

shake

ドン!

と窓にぶつかる音

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びっくりして動けないでいると

shake

ドンドンドンドン!と 次第に音は激しくなる

それにつれ"ソレ"の動きも

狂ったように激しくなり

私は思わず小さく悲鳴を上げ目をつぶった

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どれくらいそうしていただろうか

気が付くと音が止んでいた

恐る恐る目を開け、カーテンの方を見る

もうそこには何もなく

静かに隙間から西日がこぼれているだけだった

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しばし茫然としていたが

寝ぼけてただけだ と無理やり納得し

1階のリビングへ向かった

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猫を抱き震えていると父が帰宅してきた

よほどひどい顔をしていたのだろうか

「どうしたなにかあったか」と聞いてきた

冗談の通じない厳格な父であったため

信じてもらえるとは思えなかったが

体験したことを話すことにした

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しばらく黙って私の話を聞いていた父は

ただ小さく呟いた

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「もう来たのか」

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もう来たって なにが?

どういう意味?

なにを知っているの?

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私は矢継ぎ早に問いかけたが

父はなにも答えてはくれない

「おまえは早くこの家を出なさい」

とだけ言われた

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まるで納得のいかない私は

どうしてかと 更に問い詰めたかったが

今までに見たことのない

鬼気迫るような父の表情を見て

あぁ きっとこれはただ事ではないのだろうと悟った

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それから母が知り合いに連絡をつけたらしく

一週間としないうちに

学校の近くで住む場所が見つかった

引っ越し当日 見送りに来た父の

「気を付けろ」が

色んな意味を孕んでいるようで怖かったのを覚えている

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それからは特になにも起こらなかった

無事学校を卒業して地元を出て働いている

ただ

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最近部屋に居ると窓の外を何かが横切るんだ

"ソレ"はまだ居る

次気が付かれたら、と思うと部屋に居るのが怖い

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@車猫次郎 さん
こんばんは
お褒めの言葉ありがとうございます

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@アンソニー
アンソニーさん、ありがとうございます
今回が初投稿になりますがコメント頂けて嬉しいです

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