短編2
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凄い死顔

これは、以前私が勤めていた会社での出来事です。

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本田部長は仕事もでき、部下からの信頼も厚い頼れる上司でした。

いつも私も含めた部下を気遣ってくれ、全員の誕生日を把握して、お祝いをしてくれる様な優しい方でもありました。

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そんな部長の元で働くことができ幸せだったのですが、気掛かりだったのが、部長が会計課の女の子と不倫していることでした。

更に、その女の子をたぶらかして会社のお金を横領してるなんて噂もあったりして、人は見かけによらないねと、同僚と話していました。

この話はもちろん会社ではタブーでした。

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ある日、私は夢を見ました。お葬式の夢です。

死んだのは、あの本田部長でした。

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夢の中で私は部長の家に向かいます。

そこには、喪服を着た部長の奥様がいらっしゃいました。暗い顔をして、俯いたまま微動だにしません。

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旦那が死んだのだから当然か、と心中を察し、私は奥様にお悔やみの言葉を述べます。

そして、定型的にお顔を見せてくださいとお願いしました。

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奥様は、下を向いた姿勢のまま右手を挙げ、仏間の奥を指さしました。

その先には、まだ布団に寝かされている部長の亡骸が横たわっています。

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はて?と、部長の横に座った私は違和感を覚えました。

部長の顔の所には白い布が掛けてあるのですが、首から先、頭の部分が何もないかの様に凹んでいるのです。

白い布は暖簾のように、首の断面を隠す形で掛けてありました。

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どういう事だろう。私は不気味に思いながらも白い布を持ち上げました。

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あの光景は今でも脳裏に焼き付いて離れません。

白い布の下は、位置的に切断された首の断面になっている筈なのですが、その断面に部長の顔が張り付いていたのです。

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円筒状の首の丸い平面の部分に目と鼻と口が付いているのです。

ハンコと言えばわかりやすいでしょうか。あるいは、トーマスのような感じでしょうか。

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その顔は眠っているようでした。鼻に綿が詰められていて、かろうじて死んでいるのがわかりました。

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あまりの夢の内容に、目が覚めてからも気持ちが悪く、その日は会社を休みました。

次の日会社で、昨日部長の不倫相手の子が死んだ事を知りました。交通事故でした。

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その日から、部長は日に日にやつれていきました。

夢の事もあり、気味悪さに耐えられなくなった私は、部長の恩も忘れて早々に職を辞しました。

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辞めた数週間後に、部長が自殺したと元同僚から一報がありました。首吊りだそうです。

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その会社はそれからしばらくして倒産しました。

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