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中編3
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鉈男

私の小学校の正面には民家を一軒挟んだ裏に廃墟があった。その廃墟は人の住んでいない民家なのだが庭には草が生い茂り廃墟の裏は大きい鉄工所だった為昼間でも薄暗く不気味な雰囲気だった。

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私は野球部に所属しており、部内では部活終わりの夕方その廃墟に誰が一番近づけるかという度胸試しが流行っていた。

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そんなある日お調子者のNが中に入ってみようぜと言い出した。恐怖心はあったが皆好奇心を押さえきれずその日の部活終わりに廃墟に入ることになった。

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いざ廃墟を目の前にすると皆畏縮し、結局ジャンケンで負けたものから入ることになった。仲間内で一番ビビりのYが負けてしまったのだが途端に震えだし、半分失神しかけていた為部室に戻らせ結局勇気あるTが先人をきることになった。

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廃墟は正面から見て左側に玄関があるのだが鍵がかかっている為正面側のキッチンの割れた窓から入ることになった。

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T、私の順で家に入った瞬間に後ろのKが突然、ここはやばいと言い出したのでどうした?と聞き返すと蔦が生い茂っている奥の部屋から鉈を持った真っ青な顔の男が覗いていたという。

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Kは真面目で冗談を言うタイプではなく正直とても怖かったが今さら引き返すのもばつがわるいのでなんとか説得し、KとNも家の中に引き入れた。

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Kの発言があったので蔦の部屋は後回しにすることになった。家の構造は説明が下手で申し訳ないがキッチン、リビング、蔦の生えた個室が繋がっており廊下を挟んで和室、和室の反対側に個室とトイレがあった。平屋だったのだがリビングに中2階のようなものがあり階段はなく梯子だけがかかっていたが流石にこの雰囲気で古びた梯子を昇って2階を見る勇気は無かった。

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和室に近づいた時点で目に入ったものがある。長い髪の毛状のものが部屋の中心部の畳から生えていた。現実離れした状況と恐怖心で4人とも逃げ出したくなったのは言うまでもないが口に出せば収集がつかなくなってしまうので皆平常心を装った。

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和室横にある個室の扉を開けた。その部屋は壁に卒業証書が飾ってあり、おそらく女性と思われる名前が記載されていた。他の部屋は経年による劣化が見られたがその部屋だけやけに綺麗だったので逆に気味が悪かった。

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4人の恐怖心は限界寸前だったがここまで来たら蔦の部屋を覗かずに出るわけにいかないという謎の好奇心にかられT、私、Nの3人で部屋を覗いた瞬間に戦慄が走った。

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正面から部屋を覗いた時点で見えるはずがない部屋の角に鉈が落ちていたからだ。

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T、私、Nの様子を見ていたKも尋常ではない雰囲気を察し4人で全力で家から逃げ出した。

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息をきらして部室まで戻り一安心していたところNが片手に何かを持っていることに気づいた。戦利品だと言ってリビングにかかっていた鏡を持ってきていたのだ。

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Nがさんざん罵倒されたあと皆で話し合い鏡を返しに廃墟へ戻ることになった。今になって思えば次の日の明るい時間帯に行けば良かったと思うのだが早く帰りたいという思いともう忘れたいという気持ちでいっぱいだったのだろう。

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Kは鉈男を見たあとだし、Nは罵倒され意気消沈の為結局私とTで返しに行くことになった。私ももう正直関わりたくはなかったが鏡を持ち帰ったことによって何かがおこるほうがよっぽど嫌だった。

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Tも精神的に限界だったのだろう、家の前に着くと中には入らず割れたキッチンの窓から鏡を放り投げた。鏡の割れた音がしたがもう関係なかった。とにかく早く帰って忘れたかった。いろいろと話したいことはあったが時間も遅かった為皆深くは語らずその日はどんよりした空気で家路についた。

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翌日野球部はその話題でいっぱいだった。私たちとは別の野球部グループが本当に廃墟に入ったのかを確かめに行くと言い出して廃墟に行ったまでは良かったのだが戻ってきてからおかしなことを言い出した。

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お前ら本当は中に入ってねーだろ、鏡は割れてたけどリビングの壁にかかってたぞ。

Concrete
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