中編3
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市川一家四人殺人事件

1992年の事件である。

 2月12日深夜、千葉県市川市でコンビニへの道を自転車で急ぐ少女がいた。少女は15歳で、勉強中にシャープペンシルの芯が切れたためコンビニへ買いに出たのである。クラスの副委員長をつとめ、演劇部と美術部をかけもちする真面目な生徒であった。

 しかし帰宅途中、自転車は背後から走ってきた車に追突され、少女が転んで膝に擦過傷を負った。

 車からおりてきた男は彼女を救急病院へ連れていき、手当てを受けさせた。そのまま自宅まで送り届けてもらえるものと少女は思っていたが、しかし突如男は豹変し、ナイフを突きつけてきたのである。

 頬を切られて怯える少女を男はアパートへ連れ込み、2度犯した。そして現金を奪い、生徒手帳を出させて住所と名前を控えた。

 男の名は関光彦。まだ19歳になったばかりで、余談だがこの22時間前にも24歳のOLを殴りつけ、強姦している。

 3月5日午後5時前、関は少女の自宅へ押し入った。

 事前にかけた電話に誰も出なかったため彼はてっきり家は無人だと思い込んでいた。だが、実際には少女の祖母が留守番をしていたのである。

 関は祖母に向かって、

「通帳を出せ」

 と凄んだが、彼女は怯えた様子もなく自分の財布から8万円を抜き出し、これをやるから帰れ、と言った。

 馬鹿にされた、と思い関はカッとなった。さらに脅しつけたが老女がひるまず警察に通報しようとしたため、関は激昂し彼女を配線コードで絞殺する。

 死体を横にさらに金品を漁っていると、午後7時頃に母親とともに少女が帰宅してきた。

 関は母親を包丁で刺殺。そして床に広がったその血と尿を、娘である少女にタオルで拭き清めることを命じた。目の前で母親を殺され、放心状態の少女は唯々諾々とそれに従った。

 その後、保母に連れられて少女の妹が帰宅。

 夕食後、まだわずか4歳の妹は絞殺された祖母の死体が転がる部屋へ、TVを観ていろと追いやられる。

 それから関は少女を、本人いわく「気分転換しようと」強姦した。しかし凌辱の最中に少女の父親が帰宅してきたため、これをも刺殺。通帳を奪ったあと、少女をラブホテルへ連れ込み、その場で2度強姦している。

 翌朝、少女の家へ戻ってみると、目を覚ました4歳の妹が泣いていた。

 泣き声に腹を立てた関はその体を掴み、背中から包丁を突き入れ胸にまで貫通させた。

 「いたい、いたい」と幼い妹が細い泣き声をあげるのを聞き、少女に向かって「楽にさせてやれ」と言ったが、少女が動けずにいたので関が絞殺したという。

 恐怖の頂点にいた少女は、わずか4つの妹を殺されて糸が切れたようになり、そのとき初めて関に歯向かった。

 関は少女にも包丁をふるい、左腕と背中を切りつける。

 しかし凶行はそこまでだった。通報によって警官が駆けつけたのだ。関は少女に包丁を持たせ、

「お前、これを俺に突きつけて脅してるふりをしろ」

 と言った。しかし矢継ぎ早の不幸に身も心も疲弊しきっていた少女は、呆然として座り込んだまま動かない。

 苛立って少女を怒鳴りつけた瞬間、雪崩れ込んだ警官隊に彼は捕縛された。

 少女が14時間ぶりに保護され、毛布をかけられたその時も、傍らには少女の母、父、祖母、妹がものいわぬ死体となって転がっていた。

逮捕時、関は「ああ、これで俺もついに少年院行きか」としか思っていなかった、という。

 1989年の綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人を思い起こし、「あれだけやっても誰も死刑になってないじゃないか。俺なんかまだまともだ」とも思っていたそうだ。

 しかし平成6年8月、地裁の判決は死刑であった。ついで高裁、最高裁ともに上告を棄却。

 平成13年12月、死刑が確定した。

怖い話投稿:ホラーテラー ゾディアックさん  

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