短編1
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夢の話

父方の祖母が亡くなり数年が経った頃の話。

15歳の頃に新築して引っ越しするまで、祖父母とは一緒に暮らしていた。三世代同居というやつだ。

それなりに可愛がってもらっていたので、亡くなったときは悲しい気持ちになった。

その祖母が他界したのは高校の卒業式から数日後の3月某日。慌ただしかったのを覚えている。

しかし大学に入学し、楽しい日々を送るうちに次第に悲しさも薄れていき、祖母のことを思い出すこともほとんどなくなってしまった。

季節や時間帯は忘れてしまったが、その日、悪夢を見て私は飛び起きた。

度重なる心霊スポット探訪で鍛えられた私のメンタルは、悪夢を見て飛び起きても当時流行っていたmixiの日記にアップするぐらいだったのだが、その日はどうにも嫌な空気が部屋中に充満しているような、そんな気がして仕方なかった。

部屋の隅の暗がりに何かが潜んでいるような気配。

とにかく、汗で湿った寝巻きを着替えようと衣装ケースを開けると、器用に手足を折り畳んだ祖母がケース内にみっちりと詰まっており、生前と同じニコニコした笑顔を浮かべていた。

そこからの記憶は曖昧だ。

見た光景は鮮明に覚えているのだが、未だに夢か現実か判別出来ないでいる。

その後、祖母は夢に出なくなった。

Concrete
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