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短編2
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無視された理由

明日は一人息子の結婚式。

私は父として新郎新婦に、スピーチすることになっていた。

そんな日の前日。

私は、歩いて帰宅した。

その日は、会社にいったはずなのだが、

何故かあるときから記憶がないのだ。

「ただいま。」

妻「・・・・」

「おーぃ、母さん帰ったぞー。」

妻「・・・・」

・・何かあったのか・・?

俺は妻が怒るようなことは、結婚生活12年目になるが、

いままでに一度もしたことがない。だから、無視される理由がないのだ。

なぜだか分からないが、うしろ姿で台所に向かう妻が泣いてるように見えた。

ネクタイをはずしていると、明日結婚する息子が帰ってきた。

息子「ただいま、母さん。」

妻「おかえり。」

息子には言って俺には言わないのか。と少しムッとしたが、

特になにも言う気にはならなかった。

息子「母さん、元気出せよ。俺だって泣きたいよ・・・。」

いったい何があったというのだ?

私は息子に聞いてみた。

「母さん、なんで泣いてるんだ?」

息子「・・・」

「どうした?なんで無視するんだ?」

息子「・・・」

「明日、楽しみだな。」

息子「・・・・」

息子も涙目になっている。

普段温厚で知られる俺も、このときばかりは、気分が悪くなった。

ネクタイをはずすと、風呂にも入らず食卓に向かった。

今日は私の好物のサンマの塩焼きと、

手作りのポテトサラダだった。

「ん?・・・」

おかしい。

飯の味が全くないのだ。

「母さん、味付けがいつもと違うんじゃないか?」

妻「・・・・」

味がしないご飯のせいで食欲が失せた私は顔を洗うことにした。

洗面所に向かうと水道の水を出して、顔をあらった。

「ふぅーっ・・・。」

といって鏡を見た私は、「あれっ?」と思った。

鏡に自分の姿が

うつっていないのだ。

そう思った瞬間、走馬灯のように

今日の帰宅途中の高速道路での事故の記憶がよみがえった。

私はいつも通っている高速道路で今日、

車ごとトラックに追突されたのだ。

おもったより激しい衝突だったようで、車もペシャンコに近い状態だった。

思えば、事情聴取してくるはずの警察さえも私のことを無視していた。

追突してきたトラックの運転手までも。

何をいっても無視されるので、

歩いて帰宅することにしたのだった。

私は気づいた。

「そうか、私はあの時・・・。」

息子が言った。

「母さん、なんで父さんの場所に

ご飯用意してるんだ?」

妻が涙声で息子に言った。

「父さんは死んだけど、またいつものように、家に笑顔で「ただいま」と

言って帰ってきてくれそうな気がするの。」

怖い話投稿:ホラーテラー 達人さん  

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