前回、修学旅行時の写真の少女のお話をしましたが、
今回は姉が入院したときのお話をしたいと思います。
姉が中学三年生で、高校受験を控えた夏に、急性胃腸炎で数日入院したことがありました。
神経性のものだったようですが、安静にしていないと悪化してしまうので、嫌がる姉(学力テスト間近だったので帰りたがったのです)を強制的に入院治療となりました。
一週間ほどで無事退院となり、姉も帰宅できることに安堵していました。
入院中、私は一度しかお見舞いに行けなかったのですが、その時の姉の言動が気になっていました。二人部屋にいたのですが、退院時までお隣りは空いたまま。姉は個室状態で過ごしていました。
「看護師さんも誰もいないのに、室内をひたひた歩き回る音がしたり、カーテンを開け閉めして誰かが私を見ていたの。夜には遊んではしゃぐ子供の声がしたり、部屋を走りまわるのよ。部屋替えてほしいと頼んでも、空いているのはここしかないからってだめだったから、退院できてよかったよ。」
あぁ…
姉はここでも見ていたのか…
そう感じたものの、神経性胃腸炎なんだしどこか過敏になっていたからだろうなとあまり気にかけることもありませんでした。
退院した夜
姉は久しぶりの自宅で興奮していたためか、なかなか寝付けずいました。
下のベッドにいた私は相変わらずの爆睡(苦笑)
私の寝息を聞きながら、姉は自分も早く寝ようと目を閉じ少し経ったとき
子供の笑い声がしました。
それも一人ではなく、複数。
笑い声はだんだん近付いてきて、気付くと姉の胸の上に一人。両腕に一人ずつ。計三人の男の子が胸と両腕を抑えつけ、なお楽しそうに笑い続けていたそうです。
「お姉ちゃん、一緒に遊ぼうよ」
胸の上にいる男の子が話しかけてきました。
姉は「遊べない」とだけ伝えると、両腕にいた男の子らも「さみしいんだ、一緒に遊ぼうよ」と言ってきました。
姉は「私は遊べないから」と伝えると、三人が「なぜ?どうして遊んでくれないの?」
「さみしいんだ、遊んでよ」
「あっちで遊ぼうよ」
と、いっせいに言ってきました。
姉は「君たち、どこから来たの?」と尋ねると
胸の上にいた男の子が「病院から着いてきたんだよ、お姉ちゃん病院で遊んでくれなかったから。だから、一緒にあっちで遊ぼう。」と壁のほうを指差しました。
そちらを見ると、真っ黒く渦巻くまるでブラックホールのようなものがあり、瞬間的に『あっちへ行ってはだめだ!戻れなくなる!』と感じ、「私は一緒には行けない。遊べない」と半ば泣きながら伝えると、男の子らは急に怒りだし
「お家なら遊んでくれると思っていたのに!あっちへ行こうよ!僕らはあっちへ行かないとなんだ!一緒に行ってよ!寂しいよ!」
三人で姉を引っ張り引きずり込もうとしてきました。
姉は無我夢中で払いのけようとしましたが、すごい力で引っ張り笑いや怒り声も増していきました。顔が壁にくっつき吸い込まれる!もうだめ…
でも、私はまだ生きたい!まだ死ねない!やり残してることがたくさんある!死にたくない!
必死に抵抗し、金縛りのなかふりしぼるように私の名前を呼んだんです。
「う〜ん…誰?何なのっ!?」
私が寝言&寝返りをうった瞬間、男の子らは消え金縛りも解け姉は泣き出しました。
寝ぼけながら私はベッドの姉を覗き込むと、壁に体を押し付けられたようなかなり不自然な恰好でいたので、どうしたのかと聞きました。
姉は泣きながらも一部始終を話してくれ、ふと姉の手首〜腕に目を落としたとき、赤く手形がたくさん残っているのに気付き、これは何かと聞くと、
「引きずり込もうとすごい力で引っ張られたから」と言いました。
子供の小さな手形が赤くくっきりとたくさんついていたのです。明らかに姉の手より小さく、嘘を言っているようには思えませんでした。
その手形は数日跡が残り痛々しさがありました。
姉に後から聞いた話によると、三人は兄弟で胸に乗っていた子が長男で両腕を抑えていた二人は双子の弟だったそうです。
数年前に交通事故に遭い、姉が入院した病院に運ばれたものの三人ともに命を落としたようです。
長男の子は夏なのに青い車のアップリケがついたトレーナーを着ていて、所々赤く染みがついていたといいます。
事故のときについた血液だったのではないかと話していました。
姉のいた病室に簡易ベッドを一台置き三人一緒の部屋に運ばれ亡くなったそうです。
連れていかれずよかったと思い出させる出来事でした。
怖い話投稿:ホラーテラー ちっちゃこさん
作者怖話