今回のお話は、前回同様に姉が中学三年生の夏に体験した出来事です。
ちょうど夏休みで、姉は塾の夏期講習に通いながら受験に備えていました。
その日は夏期講習がお休みで、自宅で勉強しつつ、少し休もうと自室で横になったそうです。
時間は15時頃で、日中でも1番の日差しと暑さ。
少し疲れもあったため、アイスノンで目元と首筋を冷やし、外から聞こえる蝉の声や自宅隣にある小学校で遊ぶ元気な児童らの声を聞きながら、まどろんでいたようです。
その時、自宅には祖母と母がいたそうなのですが、二人とも階下にいたため、2階には姉一人でした。
15分ほど経った頃、階下で人の話し声がし始めました。
姉は祖母が見ていたTVの音かなと、気にとめることもなくそのまま横になっていました。
一人ではなく複数で、TVの番組にしては笑い声やら怒声、ささやくような声など老若男女問わず、各々がただ言いたいことを話しているので、『なんか変だな』と思い始めました。
『来客でもあったのかな』
それにしては、玄関のベルも鳴っていないし、祖母や母の声は一切しないので、一体何事かと訝しく感じ始めたとき、それらの声は階下から姉の元へと近付いてきたのです。
話し声はだんだん大きなものになり、階段を上がる足音がないことに異様さを感じたときには、金縛り状態になっていました。
自室は窓もドアも開け放していたので、声が自分の元にやってくるのがすぐ分かりました。
それらの声は相変わらず何かについて笑っていたり、怒ったり冷静に語ったりと様々です。
その頃には、今まで聞こえていた外の蝉や児童らの声が全くせず、ただ話し声だけがボリュームを上げながら近付いてきていたそうです。
ついに姉の元にやってきました。
アイスノンでちょうど目隠しをしている状態だったので、周りを見ることはできないのですが、何故か室内の風景は明確に脳にあったと言います。
話し声だけなら姉も『またか』程度でいられたようですが、なんと身長30ほどの小さな人達がぞろぞろと入ってきて、姉の周りを取り囲んだのです!
いっせいに姉を覗き込み、話しているはずなのに一様に無表情で澱んだ瞳をし、青白く口元は動いていない。
なのに、話し声は聞こえ、頭が割れそうな音量に。
そこで気付いたのは、その内容。全て姉のことについて話しをしていたのです。
「この子は少し疲れているようだ」
「ちょっと痩せすぎだな」
「外で遊べばいいのに」
「まだ若いのね」
とにかくいろいろ姉について話している。
そして誰かが
「連れて行ってしまおうか」
と言った瞬間
それらはぐっと顔を近付け、いっせいにニヤリと薄気味悪い笑いをしたのです!
姉は声にならない悲鳴をあげ、『助けて〜っ!』と必死に叫び続けました。
その時
ピンポ〜ン
玄関のベルが鳴りました。
母が応対に出ようと「は〜い」とリビングから出てくる声がし、同時にそれらが消え金縛りも解けました。
外からは蝉と児童がはしゃぐ声が聞こえています。
ガバッと飛び起き、周りを見回すと誰もいません。
来客が帰るのを見計らい、階下に降り母に誰か他にも来たか聞きました。
もちろん誰も今来た以外には訪れてはいませんでした。
日中の出来事だったので、自分の勘違いかと思いましたが、階段〜自室までが小さな本当に小さな足跡(裸足で入ってきたかのような、土で汚れた跡)が無数についていることに気付き心底ぞっとしたそうです。
連れていかれずよかった…
帰宅した私にだけこの体験を話してくれました。
怖い話投稿:ホラーテラー ちっちゃこさん
作者怖話