短編2
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孤独死

私の住むアパートに70代位の女性が一人暮らしをしていた。

名前はタエさんとする。

隣人ということもあり顔を合わす機会が何度かあった。

私は無愛想な質なので会釈する程度だがタエさんは毎回明るく話しかけてきた。

娘と孫の自慢話には正直ウンザリしたが、顔をくしゃくしゃにして笑う姿は印象的だった。

ベランダには鉢植えが所狭しと並べられ 朝早くから草花の世話するタエさんの鼻唄と雀のさえずりが聞こえたりした。

そんなタエさんが姿を見せなくなった。

気がつけば一週間、生活音や鼻唄も聞こえてこない。

娘夫婦と一緒に暮らすと言ってたから引越したのか。

それなら挨拶ぐらいには来るだろう。

夜ベランダ越しに、タエさんの部屋を覗き込むと窓は閉め切り部屋は真っ暗だった。

ベランダの草花が全部枯れていた。

嫌な予感がして大家さんに連絡した。

アパート前は救急車や野次馬連中で騒がしくなった。

毛布を被され救急隊員に運ばれるタエさんの亡きがらを見たのが最後だった。

脳梗塞だと聞いた。

タエさんに身寄りはなく天涯孤独の身だったとも聞いた。

軽度の認知症もあったとか…

孤独死。

どこにでもある話かも知れない。

生きるということは何だろうとも考える。

無邪気に笑って家族の話をしていたタエさんの顔は輝いていた。

それが夢うつつや幻であったとしても…

タエさんにとって生きる活力になっていたなら喜ばしいことだと思う。

時折 タエさんの鼻唄が微かに聞こえてくる。

多分 空耳だろう。

怖い話投稿:ホラーテラー 猫さん  

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