気がつくと僕は教室に一人取り残されていた。
すっかり辺りは暗くなり、生ぬるい風にカーテンが不気味に踊っている。
昼間はあれだけ賑やかだった校庭も、時が止まったかのように沈黙したままだ。
「ったく、先生も気づいてくれよな。」
急いでカバンに教科書やノートを詰め込み、教室を出ようとしたその時──
『…イ…タ…イ…』
絞り出すように発せられた声。
『イ…タ…イ…ヨ…ウ』
隣の教室からだ。
こんな時間に聞こえてくる声なんて、普通じゃないのは誰にだってわかる。
相手にしてはいけない!
本能が僕に次の行動を決めさせた。
足音をたてないように、教室の前を通り過ぎる。
こんなときに限って、戸が少し開いている。
見ちゃだめだ。
そう思えば思うほど、体はいうことをきかないものだ。
そして……
ついに、教室の床に倒れているソレと目が合ってしまった。
「……!?」
ソレは
ズルズルと
体を這わせて
僕の方へ近づいてくる。
キーーン!!
耳鳴りがしたと同時に全身が硬直。
──金縛りだ。
か、体が動かない。
…ガラガラ
無情にも戸が開き、ソレは近づいてきた。
…ズズッ…ズズッ
カッと目を見開き
はみ出した臓物を
引きずりながら
ソレは起き上がる。
声が…出…な…い
『…ツカマエタ』
「授業中に居眠りとは、何様だぁ!!」
先生の怒鳴り声で目が覚める。
──夢だったのか。
「廊下に立ってなさい。」
しかも、怒られたのは僕じゃないみたい。
あれっ?
なんで僕、先生の隣に立ってるんだろ?
「では、続きを始める。
今日はこの人体模型を使った内臓の働きについて勉強するぞー。
ん?なんだ?
今日、白井は休みか?」
怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん
作者怖話