俺は、小さい頃から幽霊やそういう類いのモノと縁がありました。それが幸いして(?)心霊体験には慣れっこになっていた。
肝試しや心霊スポット巡りも好きで、例え誰も付いてきたがらなくても一人で出向いたりしてます。
でも、そんな俺でも命の危険を感じた出来事がありました。
嘘っぽいかもしれないけど実話です。
それは、2008年の7月28日。
俺は、一人で肝試しに行った。
(大勢で行くよりも一人の時の方が幽霊に会える確率が高いので…)
場所は茨城県大宮市のとある山中。
山間部を走る少し広めの道を車で走っていた。
本当は別の心霊スポットに行くつもりだった。
しかし、その道の途中に不気味な横道を発見。
そのポツリと開いた道の入口は俺の好奇心を煽った。
俺は絶対に何かあると思い、迷うこと無くその道へ車を向かわせた。
その道は、舗装などされてなくて車一台通るのがやっとの道幅だった。
明かりは一切無く自分の車のヘッドライトの灯りだけを頼りに深い雑木林の中を走ることおよそ15分。
目の前が急に開けたかと思うと、そこには大きな工場の様な建物が現れた。
それを見た時、背筋に少し冷たいものを感じた。
しかし、そんな事はいつもの事なので特に気にしない。
俺はその工場の正面にある駐車場らしき場所に車を停めて、用意していたライトとデジカメを持って、工場へと近付いた。
工場の入口は施錠されて無かったので容易に中に入れた。
繊維工場のようだった。
中の空気はひんやりしていて、作りかけの洋服みたいなのが蜘蛛の巣と埃にまみれた作業台の上に放置されたままになっていた。
俺はとりあえずデジカメで工場の中の写真を手当たり次第に撮りながら足を進めた。
そして、工場の二階にあたる部分のある部屋の前に来た時だった。
物凄い異様な威圧感を感じた。
他の部屋は鍵など掛かっていなかったのに、その部屋だけ鍵がかけられていた…。
好奇心の塊のバカな俺はその部屋の鍵を探して工場内を歩き回った。
そして、2、3個の鍵を発見して、再びその部屋の前に…
…………部屋のドアが開いた。
持っていたライトで俺は部屋の中を照らし出した。
部屋の中には…
無数の御札
床や壁にぎっしりと貼り付けられていた。
背筋に寒気が…とかそういうレベルじゃなかった。さっきまでの好奇心も消え去って、その時はただそこから逃げることしか考えられなかった。
階段を駆け降りて、工場の出入口へ向かった。
必死に逃げる俺の後ろで誰かの足音がする。
振り替えったらまずい!
本能が俺にそれを知らせていた。
車にたどり着いた俺は、エンジンをかけようとキーを回した。
ありきたりな話になるが、エンジンがかからない。
そうこうしてる間に工場の出入口から誰かがこっちに向かって歩いてきていた。
一瞬、その姿が消えたかと思った次の瞬間には、俺の車の助手席には知らない女が座っていた…。
その女は、普通の格好をした30歳位の女だった。
血も流してないし、目も窪んでない。
本当にその辺にいる生きた人間の様だった。
あっけにとられた様子の俺に女が一言、
「ありがとう、本当にありがとうございます。」
そう言って女は消えていった。
何の事言ってたんだ??
俺が少し戸惑っていると…
「くそ、どうやって抜け出した!!」
突然、暗闇に野太い男の声が響き渡る。
そして、あの部屋の前で感じた異様な威圧感が再び俺を襲った。
工場の出入口から男が歩いてきていた。
見た瞬間にヤバイと直感した。
ボロボロの着物を着た男だった。
微かに見えるその顔は半分欠けていて、両手、両足はあり得ない方向に曲がっていた。
「お前、そこで何してる?!」
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!
奇跡的に車のエンジンがかかった。
俺は車を急発進させてそこから逃げた。
何とか無事に家にたどり着いた。
俺はあの工場内をとった写真を見てみた。
ほとんどがただの写真だったが、最後に撮った覚えの無い写真が一枚…
それは、俺の車の中から撮られた写真のようだった。撮られた時間はまさに俺があのやばい男を見て逃げようとした瞬間。
車のフロントガラス越しに物凄い形相で俺を睨み付ける顔が半分欠落したあの男が写っていた…
怖かったが、あの場所で何があったのか?
すごく気になった俺は、後日またあの工場を訪れた。もちろん、昼間に。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話