タイムマシン
それは全人類の憧れ
アインシュタインの相対性理論に基づくと、造ることは可能だという
光よりも早く進む物質とエネルギーがあればという条件だが──
「完成したぞ!!
これで長年の夢が叶うぞ。」
エネルギー源となるカプセルをはめこむと、博士は目を輝かせた。
「物理学的に過去にもどることはできないが、未来へ移行することはできるってことが、これで証明される!」
博士は、用意していた荷物をタイムマシンに詰め込むと、早速乗り込んだ。
『おおっと、そこまでだ。そいつを渡してもらおうか。』
「誰だ?!」
『あんたが、タイムマシンを作ってるって聞いてねぇ、完成するのをずっと待ってたんだよ。』
男は銃口を博士に向けたまま、押し殺した笑いを浮かべた。
「貴様ぁ…。」
博士はギリギリと奥歯を噛みしめ、マシンから外に出る。
かつて博士のライバルだった元研究員の男は、勝ち誇ったかのように、乗り込んだ。
ピ・ピ・ピ
操作を始めると、エネルギーの数値が最大値を示し、マシン全体が振動し始める。
『まず、手始めに30年後だな。あばよ!未来で会おうな。ハッハッハッ!!』
ギュン
ギュン
ギュン
バシュー!!
──博士はまだ気付いていなかった。
未来へは行けるが、過去には行けない。
つまり、二度と戻ってはこれないこと。
造った本人がわかっていないのだから、男が知るはずもない。
『クックックッ、到着したぞ。この時代を調べて、今後の研究材料にしよう。」
博士は、もうひとつ気付いていなかったことがある。
自分自身の肉体は、未来へ転送できないことを。
もちろん、男もまだ……。
「あの家、お化けが出るらしいぜ。」
「あっ、それ知ってる!
30年前に実験で失敗した男の幽霊でしょ?」
「夜になると、『チクショウ…』って声が聞こえるらしいぞ。相当恨んでるんだな!」
怖い話投稿:ホラーテラー ソウさん
作者怖話