短編2
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愛は悲劇

恋をしている人間は二つのタイプに分けることができます

その人のそのままを愛している人間と、

その人から愛されているから、私も愛しているという人間です

ふと疑問に思ったのですが、

お互いが愛されているからという理由で愛し合っている男女の愛は、

いったいどこから来たのでしょうかね

私には恋人がいました

名前は・・・・A子にしておきましょうか

A子は心臓の病気を抱えていました

余命半年とかいう優しいものではなく、いつ心臓が止まってもおかしくはない

そんな病気でした

A子に出会ったのは12年前、私が15歳のときでした

病院の待合室で隣同士になり、仲良くなり電話番号を交換しました

(黒電話です(笑))

それから私はアキの病室にたびたび出かけるようになり、

二人は恋人同士になりました

私がA子の病気が治らないものだと知ったのは、それから少したってからでした

衝撃を受けましたが、私は最後までA子のそばから離れないでいようと決心しました

A子は決して弱音を吐くような人間ではありませんでした

そんなA子を見ていると切なくなると同時に愛しく思っていました

そんなある日、心臓移植できるという話が持ち上がりました

私たちは喜びました

が、しかし成功率がとても低く死ぬかもしれない手術でした

でも私たちはその希望を掴み取ろうとすることにしました

手術が成功したら結婚するという約束をして・・・・・

手術は成功しました

彼女はもう普通の女の子と同じになりました

私はとても喜びました

そして二人は結婚し

そして、そして、そして・・・・・・・・

そして、私の彼女に対する思いが急速に冷めていきました

私は・・私は・・A子のそのままを愛していませんでした

「重い病気でも決して弱音をはかない」そんなA子を愛していたことに気づいたのです

それから私のA子に対する扱いはひどくぞんざいになりました

話しかけられてもろくに返事もせず、ろくに帰らず、浮気までしました

もっと悲しいことにA子はまだ私のことを愛していました

A子は愛されているからではなく、私のそのままを愛していたのです

A子は私から愛してもらおうと色々な努力をしました

しかし私はそれに何一つ反応しませんでした

そのたびにA子の顔には「なんで…」とかいてありました

ある日、A子は言いました

「あなたとは出会わなければよかった。そうすれば楽に死ねたのに」

あの決して弱音をはかなかったA子が、こんなことをいうとは思いませんでした

私は、

「お前なんか昔と変わったよな」

と言いました

ええ、最低ですよね

変わったのは私の方なのに

だから私が包丁で刺されたことは仕方のないことなのです

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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