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中編3
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怨念D

この話に出てくるAを「私」として、Aの目線で話をする。

私はある同業の男の葬式に出席した。

葬式には多数の同業者が出席していた。

私たちの仕事は鉄道関係の仕事で、都会にある鉄道会社ということでかなりの出席者がいたのだ。

亡くなった人物の名前はD。

ある友人の話に寄ると、Dは駅のホームから線路に飛び出し、電車に引かれて即死したらしい。

ホームに靴が揃えられていたことから警察は自殺と判断したそうだ。

そんなことをいいながら、その友人は少し顔に笑みをうかべていた。

特になにも変哲のない葬式が終わり、出席者達は散り散りに帰って行く。

散り散りに帰る者達のなかには、泣いている人がほんの数人しかいない。

普通、親族だけではなく同僚の者や同期の者などが泣いていてもいいものなのに、親族くらいしか泣いている者を見なかった。

なんのことはない、同業の者は皆、Dのことを忌み嫌ってたのである。

皆、仕事中のDを避けていた。

Dの仕事は権力による事実のもみ消しから成り立ち、悪事や色事の噂も飛び交っていた。

被害にあったと口にする女性勤務員も複数いるくらいだ。

そんな男だったから避けられるのも当然で、しかも立ち向かう者など到底いなかったのである。

そんなDが死んだ。

「さてと、帰るか。」

そう呟くと私は道を歩く黒い集団に混じりながら駅まで歩き、電車を乗り継いで自分の家に帰った。

(明日も仕事なんて気が滅入るな)

私はいつもより早めにベッドに入り、いつもより重い1日を終わらせた。

朝、出勤準備を済ませて家を出て、いつものように駅に向かった。

会社へは電車を使っている。

それほど人のいない駅のホームに立ち、電車を待ちながら私はDのことを考えていた。

そこへ一本の電車が入ってきて、私はDについて考えながら無意識にその電車に乗る。

中に入ると心地よい冷気が体を包んだ。

平日の朝だというのに、車内には人がほとんどいない。

そんな快適な空間の中で、私は座席に座って目を閉じてDについて考えた。

(やっぱり、あいつは殺されるべきだったんだよな)

そう心の中で囁き、目を開けた。

そこで私は自分の目を疑った。

目の前は電車の壁ではなく、駅のホームの壁である。

しかも模様からして線路側の壁だ。

しかも壁がやけに近い。

私は線路の上に座っていたのだ。

私は冷や汗をかき焦ってホーム側に振り向いた。

案の定そこには人だかりができている。

「なんだ。」

「危ないぞ。」

「どうしたんだ。」

「この人いきなり線路に降りたのよ。」

「早く上がれ。」

など、人だかりは口々にものを言っている。

もちろん、これらの声は私の耳にも入りホームに上がろうとした。

しかし線路に足がくっついているように、私は動くことができない。

その時、光が私の左側から差した。

電車だ。

しかも急行で駅を通過する。

人だかりは私から距離を置いて、目や口を手で覆ったり、走ってその場から立ち去ろうとする人も見えた。

私は頭がおかしくなり、体中が一気に熱くなる感覚をおぼえた。

(…死ぬ…死ぬ…助け…て)

叫ぼうとするのだが、目の前の死の恐怖が邪魔して、うまく音が口から出ない。

ブーーン。

重低音の警戒音が電車から発せられて、私は意識が飛びそうになった。

恐怖のあまり、胃のなかのものを全部吐き出すかのような強烈な吐き気と目眩が私を襲った。

もう電車との距離は数メートルもない。

私はその一瞬の間にホームから目を落とし、ふとホームの下にある緊急用のスペースを見た。

その途端、私は戦慄した。

一人のぐちゃぐちゃな男が立っていた。

それも大きな車輪痕のようなものが赤黒くなっている。

Dだ。

あいつだ。

私と、Dの目とも言えないような無残な目が合った時、Dは口を動かした。

「…おまえが……………」

私は後半が聞こえず、ただ動いているDの口を見ていた。

…バンッ

怖い話投稿:ホラーテラー DSさん

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