あいうえお怪談 第1章 「あ行」       第3話 「あなたは私の愛する子」

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あいうえお怪談 第1章 「あ行」       第3話 「あなたは私の愛する子」

あいうえお怪談

第1章「あ行」

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第3話

「あなたは私の愛する子」

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この話は、今から2週間ほど前、本サイトの掲示板企画に投稿した実話系体験談である。

この話を投稿してまもなく、ある方から、全く同じような話をYou Tube動画配信で聞いたから確認してほしい。との連絡をいただいた。

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山岳怪談で有名なA・J氏とT・Y氏 おふたりの体験に基づく怖い話が対談形式で語られていた。実に、興味深い山の怪異を知ることが出来て怪談好きのYou Tubeマニアなら、既に閲覧しているかも知れない。

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中でも冒頭語られるA・J氏の「神隠し」についての体験談を聞いた時、ゾクリと鳥肌が立ち、しばらく震えが止まらなかった。

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動画配信があった日は、私の投稿日よりかなり後になるため、「寸借詐欺」「パクリ」といったことは一切していない。

内容は若干似ているが、登場人物、場所、時間、状況等も大きく異なる。

誤解のなきようにお願いしたい。

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前置きが長くなって申し訳ない。

本題に入る。

知人の体験した不思議な話である。

掲示板とは内容が少し異なるが、より実話に近いことをお断りしておく。

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桜も散り、緑鮮やかな春の昼下がり、リビングのソファで ひとりうたた寝をしていた知人。その横を、青黒い影が横切った。明らかな人の気配に、身を起こし、あたりを見まわずが、廊下との境のドア、窓という窓は、しっかりと施錠されている。

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ふと、それまで部屋に漂っていたある気配が消え、テーブルに置いていたスマホが鳴った。

よもや、悪い知らせでは・・・恐る恐る受話器を耳に当てる。

親友のM子からだった。

3年前から行方不明だった娘のA子が見つかったという。

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電話口からは、M子のすすり泣く声が聞こえてくる。

悪い予感は、的中した。

「A子、亡くなっていたの。それも、青木ヶ原の樹海で。一昨日、警察から電話があって。◯殺だって。」

「そう・・・だったの。」

と応えるのがやっとだった。

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M子は、しゃくり上げながら、事の次第を説明した。

検体も済み、身元も確定したことから、地元の警察署でA子の遺体と対面することとなったM子は、遺体を見るなり驚愕した。

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服に若干の汚れはあったものの、失踪したあの日のままの姿で、眠るように横たわっていたというのである。

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そう、遺品も含め全てが手つかずで、失踪した当日のままだったと。

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警察の話では、鑑識によると事件性はなし。死因は、心筋梗塞らしいとこと。

M子が、生前のA子に心疾患はなかったと説明するも、遺体は、奇跡的に綺麗でどこにも損傷はなく、警察も第一発見者も、「こんなことってあるんでしょうか。」と困惑の表情をしていたらしい。

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遺体の右手には、「あなたは私の愛する子 私の心にかなうものである」

(マルコによる福音書 第1章9-11節)と聖書の一節が記された小さな紙が握られていた。

もちろん、そんな紙切れ一枚に手がかりなどあるはずもない。

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「実はね。その小さな紙は、私が、A子の誕生日プレゼントに聖書に挟んであげた栞(しおり)なのよ。」

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言葉を失った私に、知人は告げた。

「A子ちゃんは、本当に素直で良い子だったの。きっと、神様に愛されすぎて連れて行かれたのね。」

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「あなたのあげた聖書は、どこに行ったの。」

「わからないわ。でもね。神様が連れて行ったのなら、もう、聖書なんて必要ないでしょう。だって、天国に行ったのだもの。直接神様の声が聞けるじゃない。」

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「あなた、本当に、そうお・・・。」

言い終わるか終わらないかのうちに、知人は、ガチャリと受話器を置いた。

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真夏の太陽が照りつける午後のひととき、光の中にどす黒い影を見た私は思わず目をそらした。

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