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今年、最後の「あいうえお怪談」は、「絵馬」にまつわるお話。
忙しい大晦日ですが、超短いので、読んでいただけたら嬉しい。
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大晦日の早朝、信心深いMさんは、今年1年の感謝をこめて、近所の神社を参拝した。
いつものようにお参りを済ませると、参道の傍らに、たくさんの絵馬が飾られているのが目に入った。
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そういえば、今日の昼までには全て回収されるんだったっけ。
Mさんは、1年の終わりに ここを訪れた人たちの願いを込めた絵馬を眺めてから帰ることにした。
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合格祈願
恋愛成就
家内安全
商売繁盛
定番の願い事が続く。
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中には、時代を反映してか、
YouTuberになりたい
ゲーマーになりたい
なんてものまで飾られている。
絵馬を眺めていると、寒さにかじかむ頬が ちょっぴり緩む。
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そんな中、一文字ずつしか書かれていない変わった絵馬を見つけた。
それも、板をのこぎりで切っただけの簡素なもの。
この神社で売られているものではないことは、明らかであった。
(自作の絵馬だとしたら、随分変わったことをする輩がいるものだ。)
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絵馬は、意識的にそうしたのかどうか分からないが、位置も並びもバラバラにかけられていた。
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Mさんは、全部で何枚あるのか探してみることにした。
中には、神社の関係者に見つからないように、他の絵馬の下にあったりと、巧妙に隠されているものもあった。
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「よ」「み」「や」「い」「か」「じ」「の」「ま」「し」「ろ」「つ」「れ」「こ」
「た」「か」「る」「ぬ」「で」
全部で18枚。18文字か。
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Mさんは、それらをスマホに打ち込み、帰宅してから、ちょっとした謎解き気分で一文字ずつ並べ替えてみた。
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なにかの「おまじない」かもな。
朝飯もそこそこにコタツに足を突っ込みながら取り掛かる。
小さく切った紙に、一文字ずつ書き、それを並べ替えだけのパズル感覚だった。
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「な、なんだよ。これ!」
コタツの上に並べられた紙切れ18枚は、
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「これ みたやつ のろい かかる しぬよ まじで」
Mさんは、急に ※つかれて その場に大の字に倒れた。
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つかれて 疲れてか 憑かれてかは不明だが、以来、冬季 日も昇らないような時刻のお参りは、しなくなったと話していた。
作者あんみつ姫
今年も残すところあと数時間で、終わりを告げようとしています。
振り返ると、悲喜こもごも 筆舌尽くせぬ思いが込み上げてくることでしょう。
年の初めに込めた願いは、叶えたられたでしょうか。
神社によっても、その対処法は、異なりますが、願いをかいて奉納した「絵馬」は、大晦日に回収されるそうです。お焚き上げする時期は、様々だそうですね。
今年もお世話になりました。
拙作にも関わらず、お読みいただきありがとうございました。
また、「怖い」ポチや励ましの「コメント」をくださった皆様へ心より感謝申し上げます。
「あいうえお怪談」新年は、「あ行・お」からスタートします。
引き続き、新しい年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
この場をお借りしまして、お礼のご挨拶とさせていただきます。
皆様、良いお年をお迎えください。