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長編10
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水族館の呪い上手

僕たちは、瀬戸内海に面した某県の港町に住んでいた。別に特別でもなんでもない、普通の港町だ。朝になると、町民たちはそれぞれ朝の身支度を始め、出勤する人や散歩をする人で、町は少し騒がしくなる。

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海沿いに小さな小学校があり、僕たちが毎日つまらない授業を受けている2階の教室の窓からは、忙しいそうに働く人たちが見える。ズラっと並んだたくさんの船、荷物を運ぶ作業着のおじさん、タバコをふかして会話をしている漁師さんたち。少し眩しい朝日がそこにいるみんなを照らしていた。

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朝のホームルームが始まるまでの時間、毎日その光景をボーっと眺めているのが好きだった。

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通学路には、いくつかの民家や商店が並んでおり、いつも3人で通学していた。

僕たちには「僕」の他に、仮に「B郎」と「Z介」がいた。いつもこの3人でくだらない小話をしては「ガハハハ」と盛り上がっていた。

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そんないつものくだらない会話で盛り上がっている時、僕は海沿いの道から少し外れた空き地の向こう側にある水族館の話題を出した。

僕「あそこの水族館ってもうやってないの?」

僕とZ介の前で後ろ向きに歩くB郎が答える

B郎「やってるわけねぇだろ。入っていく人も出てくる人も見たことないし。」

Z介「噂では、テキトーな経営で潰れたって聞いたことある」

B郎「ほえぇ〜」

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僕たちはその日の学校終わりに目の前まで行ってなんとなく廃水族館を見た。「目の前まで」といっても空き地の外から眺めるだけだ。平らな屋根や、そこについている三角形の背びれのオブジェはいかにも水族館って感じがし、そんなどうでも良いことで3人と盛り上がった。あまり大きな水族館ではないようだった。

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その頃、小学生は夏休みを控えていた。小学生にとって夏休みは遊ぶためのものであり、宿題なんか最終日に根性で終わらせるものだと勝手に決めていた。僕たち3人は早速夏休みを利用して廃水族館探検をすることになった。

誰が言い出したのかなど誰も覚えておらずいつのまにかそんな流れになっていた。

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探検の前日の夜、押し入れから引っ張り出したリュックにお菓子類やデジカメを詰めながら僕は明日のことを考えワクワクしていた。親には「近所の山の冒険」などと適当に嘘をついた。当然眠れるはずもなく次の日は待ち合わせ時刻ギリギリで2人と合流した。見るとB郎もZ介も眠そうな目をしているように感じた。

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「おっしゃ行くか!」

という眠そうな見ために反したB郎の元気な声に、僕もZ介も「おう!」と短めに答えて水族館へと向かった。

民家が立ち並ぶ地帯を抜け、海沿いの道に入る。いつも通学で見ている風景だが、今日は最高に色鮮やかに見えた。

「これから探検に出かける」というワクワクがそうさせたのだろうか。

いつものくだらない会話にも花が咲き、いつのまにか水族館がある広い空き地に到着した。

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正面玄関の目の前まで来た僕たちは、しばらく立ち止まって目の前の建物を見た。

そして、再び進み出したB郎に続くように僕とZ介は歩き出した。

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鍵がかかってはいたものの、割れたガラスの隙間から水族館に潜入した。ただの不法侵入だ。

館内は思ったより綺麗で、塗装が所々はげていたり、水槽のかけらが散らばっていたりするだけで建物自体の目立った損傷は見当たらなかった。

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パンフレット置きだったであろう金属の器具が倒れており、何枚かの紙が散乱していた。文字が書いてあるのは認識できたが、どこからか漏れてきている水で滲んでいて、ほとんど読み取れなかった。

「クロマグロは全長3mにもなり、…」

横でZ介が壁のポスターを音読しだした。僕たち以外誰もいない館内にクロマグロの解説が響き渡っていた。

カジキやウツボのポスターもあり、B郎がカジキの方に見入っていた。

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壁のポスターを読み漁った僕たちは奥へと進むことにした。壁に水槽が埋まっているゾーンに入る。エビやらギンポやらの、小型の生物が展示されていたのだろう。水槽のほとんどが割れており、中身は空っぽだった。

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「カジキってな、すげぇんだぜ。めっちゃ速いし背びれはシュッとなってて…」

カジキをアツく語るB郎を軽く聞き流しながら足速に進んだ。

空の水槽を見ていると、「そこででどんな生物が飼育されていたのだろうか」と、B郎のカジキ語りと同じくらいどうでもいいことが頭に浮かんできた。Z介は変わらず辺りを見回しながら淡々と歩いていた。

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壁水槽ゾーンを過ぎると、小規模の水中トンネルが現れた。ひび割れて穴が空いていたので、B郎も語るのをやめ、Z介、僕、B郎の順に慎重にトンネルを潜った。パキッ、パキッとガラスを踏む音が響く。やはりここには僕たち以外誰もいないのだと感じた。

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トンネルを潜り、Z介の横に並んだ。少し広い場所に出たようで、見渡すとそこにはいくつものボロボロな標本がそのまま放棄されていた。振り返ると、自分より後にトンネルを潜ったはずのB郎が姿を消しており、直後、僕は一つの標本の前で足を止め、ニヤニヤしているB郎の姿を発見した。

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B郎の視線の先を見ると、鼻先が鋭く尖り、ドラゴンの翼のような背びれをした2mくらいの大型魚が器具で固定されていた。剥製標本だ。

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気がつくと、Z介もB郎の横に立ち、そのデッカい魚を見つめている。僕も近寄って、説明書きされているプレートを確認すると、「バショウカジキ」と大きく印刷されているのが読み取れた。お世辞にも、本物には見えなかった。

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Z介「これプラスチックじゃね?」

僕「本物じゃぁないよねコレ。僕でも作れそう。」

少なくとも僕は本音を言っただけだったが、そのひどい言い用に対してB郎は

「パニック映画に出てくるモンスターの雑CGよりはマシ」

と真面目な顔でそんなことを言って反論した。

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僕は、雑なCGと、目の前のバショウカジキの標本のクオリティに大差はないと思い内心ニヤニヤしていたが、面倒なのでその場は納得したふりをした。Z介はすでに標本に興味をなくしたようで、まだ行っていないゾーンへと続く廊下の入り口で壁にもたれて立って待っていた。

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次へと続く廊下に進み、しばらく歩いていると、Z介が「バックヤード見たい」と呟いた。B郎と僕もそれに賛同し、手当たり次第にドアを開けていった。

「こういうときに掃除用具置き場だったらハズレ感あるよね」と地味に納得できることをB郎が言った。

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それから3分ぐらい、3人で別れてバックヤードを探し回った。遠くから「ハズレたぁー」と聞こえてくるB郎の声にクスッとなりながらも、僕はスタッフルームらしき部屋の扉を見つけた。

「あったぞ、早く来い!」

と僕は2人を呼んだ。

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パタパタパリパリと地面を蹴る2つの音が近づいてくる。

B郎「おお、マジか」

Z介「ナイス」

と2人ともすっ飛んできた。

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3人揃って扉を開け中に入ると、太いパイプやら巨大な貯水タンクやらが並んでいた。壁際にはいくつかロッカーが置いてあり、その中の二つほどは半開きの状態で放置されていた。

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Z介「すごいなおい、普段は見られないじゃんこんなの」

B郎「おお!あそこの三角のヤツなんだー!?」

僕「なんか得した気分やね」

3人ともおおはしゃぎで別々に薄暗いバックヤードを探検した。

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僕は、四方八方に伸びたパイプの束を目で追いながら、ゆっくり歩きまわった。薄暗いせいもあるのか、タンクにたまっている数センチほど溜まっているフカ緑色の水は黒に近かった。別れて探索しているのもあり、徐々に心ぼそくなるのを僕は感じていた。

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しばらくボーッと眺めていると、パイプとパイプの間に見える謎のオブジェが目にとまった。三角形の板のようなそれが少し動いた気がして僕は、急いで2人を呼びながら走った。B郎もZ介もすぐに合流し、すこし強気になった僕は、2人に何か面白そうなものはなかったか聞いてみた。

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「特になんにも。パイプとか水槽の上側とかならあったけど」とZ介が言うのを聞いて、「まあ、ただの水族館だしな」と少しガッカリしたが、

「なんか机があって引き出しにこんなんが入ってた」

とB郎が床になにかを置き始めた。

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そこは薄暗かったので、「いったん明るいところへ行こう」ということになり、いったんバックヤードを出て、比較的明るい廊下で再びB郎が発見したものを床に並べ始めた。B郎は、数冊のノートと、縁がギザギザの歯、爪切り、ボールペン、etcなどいくつかのものを床に置いていった。

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何冊かあるノートの一冊を広げ、3人で食い入るように覗き込むと、ここで飼育していた魚の名前であろう文字と、なにかの数字が書き並べてあった。飼育していた個体数だろうか。

「イソギンポ」「ミズクラゲ」「ツマグロ」、、など、どこかで聞いたことある名前ばかりだ。

飼育されている生物のメモだろうか。ページをめくっていくと、気になる文字を発見した。

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「ホホジロザメ」

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魚に詳しくない僕でもさすがに知っている。海で会いたくない魚No.1のアイツだ。横でZ介が「こんな小さな水族館でホホジロザメが飼育できるはずないよなぁ」と呟いた。B郎は「すげぇ!」と1人で盛り上がっていた。

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ノートを全てめくり終わると、他のノートも見てみることになった。新しく飼育される生物のメモ書きや、死んだ生物のメモだろう。いくつかの生物の名前、日数、雑な文字とチェックや丸印、バツ印でページが埋まっていた。

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しばらくページをめくりながら見ていると、ホホジロザメの記録も発見した。バツ印が5つほどあり、「2日」や「半日」と書かれていた。それらの文字や記号が何を表しているのかなんて、僕たにはわからなかった。

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Z介「ホホジロザメの飼育ってメッチャムズイらしいよ。ストレスですぐ死ぬらしい」

B郎「雑なメモやな。バツだらけやんけ」

僕「メモも飼育もテキトー感半端ないな」

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などと自由に言い合っていた時、遠くで「パリン!」とガラスが割れる音がした。続けて「パキン、パキン、ズズズ」と一定のリズムでガラスが割れる音と、地面に何かが擦れる音が、ゆっくりだが徐々に大きくなっている。

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僕たち3人は一斉に立ち上がり、持ち出したノートやその他の小物は放り出して元来た道を走った。あるあるだが、来た時よりも廊下が長いように感じた。

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恐怖で胸が少しドキドキしたが、B郎とZ介に置いて行かれることの方が怖いので、必死に走った。他の2人も同じようで、3人ともお互いの存在を忘れて走った。

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前方から何かが崩れる音が聞こえた気がした。

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が、そんなの気にしている余裕などなく、全てを忘れて走った。しばらく走っていると、覚えのある広い場所に出た。標本ゾーンだ。当然、標本をじっくり眺めていることなどできるはずなく、来た時に潜ったトンネルを探した。

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しかし、水中トンネルなんかなかった。トンネルの通路があった場所はがれきに塞がれていた。他に抜け道はないないのかと見渡すも、雑な標本ばかりが立っているだけで、そんなものはなかった。

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他の2人も、逃げ道がないことに気がついたのだろう。2人ともトンネルがあった辺りに座り込んでいる。なぜかB郎は、バショウカジキの標本を握りしめていた。

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ズズズズズズと、なにかは容赦なく距離を詰めてくる。音の出所が、標本ゾーンへ入り込んだ時、僕は自分たちを追って来ている者の姿を初めて見た。

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そこには真っ黒で小さな目、何列にもビッシリ並んだ歯、流線型の大型の生物が地面を這っていた。高さは2m近くある。それはまさしく

ホホジロザメだった。

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少なくとも見た目はそう見えるが、肌はボロボロでところどころ赤黒く変色していた、奴が徐々にこちらへ近づいて来るのが見える。ホホジロザメの口の両端が裂け、まるでほくそ笑んでいるよに見えた。

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生きているようには全く思えないが、幽霊でもない気がする。そのホホジロザメは、実体があって確かにそこに存在しているように見えた。気色悪い。悪臭が鼻を噛み切る。強烈なアンモニア臭と魚が腐った臭いは、意識を朦朧とさせた。

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ホホジロザメが僕たちから2mも離れていない距離に差し掛かかると、上顎を剥き出し、黒目はひっくり返って白目を剥き、殺意と野生的な食欲マックスで近づいて来る。

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しかし、ここぞとばかりにB郎が立ち上がった。手には力強くバショウカジキの標本が握られている。B郎は僕とZ介の前に立つと、奇声を発しながらホホジロザメの目やエラの辺りにバショウカジキの標本をなんども突き刺した。

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B郎はホホジロザメをバショウカジキの標本で滅多刺しにしたあと、渾身の蹴りを鼻部分にお見舞いした。ホホジロザメはしばらく動かなくなった後、ドロドロに溶けてしまった。

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B郎は続けて「おい逃げるぞ!」と僕とZ介に怒鳴り、がれきの山をどけはじめた。トンネルを塞いでいた岩を10分ほどかけてようやく取り除き、僕たち全員は標本ゾーンから脱出した。

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バショウカジキってすごい。僕はそう思った。

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そのまま玄関へ走るとB郎はガラス張りのドアを蹴破ったので僕とZ介もそこから脱出した。廃水族館を出た後も僕たちは走り続け、最終的にB郎の家に転がり込んだ。

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B郎母に廃水族館で起こったことを記憶の限り暴露した。

B郎「ヤバいデカいサメがいてそれでヤバかったんだよなんだよあそこ!」

Z介「地面を泳いでいてなんかどろどろしてヤバかったんです!」

僕「ゾンビのサメに襲われました!」

…………………

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………………

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その後、B郎が家まで握っていたバショウカジキの標本は没収され、廃水族館に返しにいくことになったらしい。B郎が「行きたくない」とあまりにも激しく駄々をこねるので仕方なく親が返しに行ったそうだ。

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夏休みが終わると予想どおり、僕たちは呼び出されて叱られた。先生や親に廃水族館であったことを聞いたが、結局廃水族館について大人の口から語られることはなかった。言わないのではなく、本当に知らなくて言えないようだった。大人たちはあの廃水族館に興味がないといった様子だ。

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その後は、サメの悪夢を見たり時々視界の端で三角形の背びれが見える程度で、特に変わったことはなかった。

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ただ、それからの僕は、様々な生物に対して敬意を示すようになった。

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