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中編4
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キュルルルルル

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これは、知人から聞いた実際に起こったとされる話です。

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夏が始まろうとしていた7月上旬のこと、大学卒業を控えたAとBとCは海にいた。

就職先も決まっている三人でAが持つ別荘で就職祝いパーティをしようという魂胆だった。

三人は1日中海でサーフィンなどをひとしきり楽しんだのち、Aの別荘で酒を浴びるように飲んで過ごしていた。

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ひと通り飯も食べて酒も飲み楽しんでいた頃、別荘に備え付けてある電話が「ジリリリリリリ」と音をたてて鳴った。

たまたま近くにいたということもあり、別荘の持ち主でもあるAが受話器を取り、電話に出た。

「もしもし。。。。え?。。。なんて?。。なに?。。。。。」

電話の内容が聞き取れないのだろう。

Aは酒が入っていることもあって次第に怒りだし、しまいには

「もういい!!」

といいながら受話器を思いっきり叩きつけた。

それを見ていたBとCは少し心配しながら電話の内容を聞くと、Aが電話の内容を教えてくれた。

「ただの間違い電話だな。俺が何を聞いても女の声で『あなたキュルルルルルでしょ?』って繰り返し言い続けてんだ。」

詳しく話を聞いてみると、どうやら『キュルルルルル』の部分はカセットテープを巻き戻したときのような、何か甲高い音らしい。

不気味だと思いつつも三人は再び酒を飲み直し、数時間後には電話のことも忘れて飲み交わし、解散した。

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次の日の昼過ぎ、二日酔いで寝込んでいるCのもとに電話がかかってきた。

着信はAからであった。

重い頭を持ち上げて電話に出たCは相手の声がAではないことに気づいた。

受話器からは涙声の女性の声が聞こえた。Aの母であった。

驚きながらもCがAの母から聞いた内容は耳を疑うものであった。

Aは今朝死んだ。サーフィンをしていたところ大きな波にのまれて溺死したらしい。

唖然としながらもAの母に昨日あったことなどを話し、電話を切った。

それから一息つく暇もないまままた着信音が鳴った。

今度はBだ。

「Bか?お前もAの母さんから聞いたか?ほんとに信じらんねえよ。」

「いやその話じゃない。俺が電話をかけたのはそのことじゃないんだ!」

Bはやけに焦っているような、怖がっているような声色であった。

「さっき俺のところにもかかってきたんだよ!昨日のイタズラ電話が!」

あの電話だ。

「そんなのたまたまだろ。ただのイタズラ電話だよ。」

「でもさ!Aもこの電話を切って死んだだろ?俺もさっき電話を切っちゃったんだよ。もしかしたら、俺も。。。」

「馬鹿!そんなわけないだろ!変なこと言うなよ!」

電話ではそう言いながらもどこか不安感を感じていたCは、今からBと会う約束をした。

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1時間後

集合場所の公園でCはBを待っていた。

Bの家からであればすでに着いていてもおかしくない時間であったが、Bは集合場所に来なかった。

不安で苛立っていたCはBに電話をかけるも、Bは電話に出ない。

何もすることができない不安感を拭うため、CはBの家へ歩き始めた。

Bが向かってくるとすれば、途中で会うことができるだろう。

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それから暫く歩くと遠くから救急車のサイレン音が聞こえた。

Bの家に近づくに連れてサイレン音は大きくなっていき、Bの家の手前まで着くと、道路で救急車が数台とまっているのが見えた。

Cの不安感は頂点にまで達していた。

救急車の近くにまで行くと、そこには電柱に衝突した軽トラックと、例えようもないグチャグチャの赤い塊のようなものがあった。

Cは信じたくなかった。

それがBであるはずがない。

一時間前まで電話越しで話していたBなわけがない。

そう思いながらその塊を見つめていたCは信じたくなかったは、その近くに携帯が落ちていることに気がついた。

Bの携帯だ。

それを見た瞬間、ポケットから電話が鳴った。

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画面には「非通知」と書かれていた。例の電話だ。

Cは少し迷ったが携帯の応答ボタンを押した。

携帯を耳に当てるとスピーカーの向こうから、

『あなたキュルルルルルでしょ?』

例の女の声が聞こえた。

この電話を切ると自分も死ぬという確信があったCは、声に反応せずにただ携帯を握りしめていた。

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『あなたキュルルルルルでしょ?』

『あなたキュルルルルルでしょ?』

『あなたキュルルルルルでしょ?』

数時間が経過した。気が狂いそうだった。

切ったら死ぬが、かといって何もできない。もしかしたら一生このままなのかもしれない。

もう手も完全に痺れきっていて、感覚がない。

もうだめだと思った頃に、女の声に少し違和感を感じた。

『あなたキュルルルルルでしょ?』

言っていることは同じだが、喋るスピードが次第に遅くなっていった。

聞き取れなかった部分も少しずつ遅くなり、次第に聞き取れるようになっていった。

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『あなたキュルルルルルでしょ?』

『あな た キュルルルルル でし ょ?』

『あな た ふん tる hsにtい でし ょ?』

『あ な た ほん tう はし nたい で し ょ?』

『あ な た ほ ん と う は し に た い ん で し ょ ?』

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全てはっきりと聞こえた。体中が尋常ではないほど震えていた。

その瞬間、輸送されるはずの車体の凹んだ軽トラックがこちらに突っ込んできた。

運転席に目をやると、そこには長髪の女が笑いながらこちらを見ていた。

体はこわばって動かない。

軽トラックはスピードを緩めずにCのいる所へ突っ込んだ。

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