これは私が北海道南西部の街に住んでいた時の話だ
その日、私は夜遅くまで会社の同僚と飲んでいた
そこそこ田舎の街なので終電の時刻はとうに過ぎている
いつもならバスに乗って帰るのだが、バスも走っていない
タクシーに乗ろうと思ったがこの日は持ち合わせがなかった
自宅まで距離はあるが歩いて帰れないほどではないため仕方なく歩くことにした
しばらく歩くと森の中に続く横道が目に入った
その道を少し通った先にテントのようなものが立っていた
それを見た私は「こんなところにもホームレスっているんだなぁ〜」と独り言を呟いた
すると、そのテントの方から何やら物音が聞こえてくる
その音は激しくなり、さらに
shake
テントが激しく揺れだした
なんかヤバいなと思ったら次は声が聞こえてきた
甲高い女の悲鳴のような声……
私は恐ろしかったが女性が事件に巻き込まれているかもしれないと思いテントに近づいた
そして、おもむろにテントの入口のファスナーを開け中を覗き見た……
が
shake
私はすぐにその事を後悔した
テントの中は薄暗く灯りの類は点いていなかった
次第に目が慣れて見えたのは長〜〜〜い髪を振り乱している女のようなシルエット
しかし、その正体は…長髪の男…だった
その男は一心不乱に体を揺らし女の様な甲高い声を上げていた
男は全裸でその腰の後ろあたりにある恐らく棒状のモノを何度も何度も尻へ当てつけ…いや、出し入れしていた
そして男はこう、うわ言のように呟いていた
「アヤコさん……アヤコしゃん………気持ちいいっ!ニワしゃん、らめぇ……あっあっ!……“ニワ アヤコ”さん…愛してる…チュッチュ」
と誰かの名前を呼びながらあたかも後ろから抱きしめられてるような感じで自身の体に自身の腕を絡め愛撫したり、キスする動作と音付きでしていた
私はとんでもない場面を目の当たりにしているのだろうがなぜだかその男から目が離せなかった
すると次の瞬間
shake
突然私は異空間の様な場所にいた
衝撃の連続の上に起きた超常的現象に何が何だか訳がわからなく夢を疑い出した時
目の前に先ほどの長髪の男の姿がプロジェクターのようなモノで映し出された
映像は静止画で先ほどの男が全裸でハッキリと写っていた
耐え難い映像ではあるが私は男の後にいる女性の姿に気がついた
その女性は男の体を愛撫しキスをする素振りをしている
男は長髪で色白で比較的可愛い顔だが太っていて少し醜い見た目
女性の方は少し歳はいっているように感じるが細身でキレイな見た目だった
この女性が先ほど男がうわ言のように言っていた“ニワ アヤコ”なのだろうか?
その後もこの女性…恐らく“ニワ アヤコ”と男が交わうような画像が何枚も流れた
そして、気づいたことが2つ
女性の“ニワ アヤコ”だが男性のアレ……が付いている
どの静止画もニワアヤコが男の尻に局部を当てているものばかりで決定的なのはニワアヤコの股間に付いている私よりも立派なイチモツを男が咥えている画像だ
ニワアヤコは男の想像の中ではニューハーフ…というよりふたなりに近い何か…なのだろう
そして、もう一つはニワアヤコと交わう度に男の見た目が可愛らしくなっていることだ
醜く膨れた腹は引っ込み、胸が出て元々の色白さもあり美人モデルかアイドルのような風貌に変わっているのだ
(ぶっちゃけ私も抱きたい)
映像が進むと男の腹が再び大きくなっていった
リバウンドして太ったという意味ではない…男は妊娠していた
“ニワ アヤコ”の子供を
映像は男がニワアヤコの子供を無事出産したところで終わった…
そして、気づいたら私はテントの前へと戻っていた
異常な状態が終わり異常な状態へ戻っただけ……
そこからは呆気に取られる暇もなく、行為を終えた男に気づかれた私は男の怒号を聞いて一目散にその場から走って逃げたのだった
それから数年が経って、引越し先のS市のバーでその時の話を怪談好きの仲間数人に話した
「なにそれ?領域●開」
と一番ウマの合うAが茶化してきた
「漫画じゃねーよ……それにアレはどっちかっつーと生●領域だべww」
「乗ってくんなよ!」
「いや、あながち間違いじゃないかもよ」
と割って入ってきたのが唯一の霊感持ちのBだった
「死者の念が強いから霊になったり、生きてても念が強ければ生き霊になったりするわけだから…思念が強ければ空間を作り出すのもあるかもしれんぞ」…と
ということはあの日私が見たものはあの長髪男の妄想が具現化した映像…つまりはあの男は女性に……そんな考えを巡らせると…私は苦笑いを浮かべた
そして、この話には続きがある
その怪談仲間に婦人科の医師をしているCがいるのだが
ある日、Cの病院に患者としてきた女性の名前が “丹羽 綾子” “ニワ アヤコ”だったそうだ
その患者は数年前から局部に違和感を感じているらしい
他の病院で検査したが問題なしとのことだった
それでも妙な感覚は続いており最近また酷くなってきたので、今回Cの病院に受診しに来たそうだ
その感覚と言うのが
「妙な話ですが…幻肢痛?って言ったらいいんでしょうか?…あった試しがまず無いんですけどね……ここ(局部)に…男性のアレ…があった気がするんです……」
作者ごまだんごファン
2作目でーす!よろしくー