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中編4
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地下倉庫

 嘘のような本当の話?それとも、逆?私自身があまり信じていないから、人が信じなくてもおかしくないかもしれない。

 海で勘違いから人助けをした父は、在日韓国人二世。母は日本人で、私は外見からはわからないもののハーフ。

 小学校の5年生の時、在日ばかりの集まる子供会で夏にキャンプに行った。

 地元のキャンプ場。でも、その近くにはある有名な霊能者も来た事がある地下倉庫があった。

戦時中に韓国や朝鮮から強制連行してきた人を働かせていた軍事工場の成れの果てだ。

 当然のように、いわくがあり、祖国に帰りたい無念の想いや日本人を恨む亡霊が出るという。

 この流れもあって、地元には在日が多いのかもしれない。

 肝試しはそこにしよぅ!!と当然、話があったが、私の同級生のお母さんが絶対に駄目だと言っていた。すごく霊感のある人らしく、たまにその子の家で知らない人の肩や額に手をあてているお母さんを見た事があった。

 でも、結局は行ってしまうのだ。二人の3年生が。

 お母さんは一つ上手だったのか、それとも自分の息子がやらかすと踏んでいたのか…。

 もしも、誰かが地下倉庫に行く事があったら、美利河を連れていきなさい、と。指導員(先生ではないが、キャンプは彼らが引率)は私に懇願した。

 しかも4人しか指導員はいないので、一人はキャンプ場に一人は連絡するために離れ、残る二人が一緒に来るはずが、好奇心に駆られた子供が5人、テントを抜け出して来てしまった。

 地下倉庫は防空濠のようなただの穴。昼なお暗いのに、夜中はさらに暗い。

 やめようよ、子供たちは自分の仲間がそこに行ったと知らないので、平気で帰ろうとする。

 さて、名前でも呼ぼうかと穴から中へわずか1メートル、入った。

とたん、後ろから絶叫。

 振り向くと指導員が子供たちをかばうようにしてしゃがみこんでいる。

子供の中には、耳をふさいでいる子もいるし、泣いている子もいる。

 私も子供なんだけどなー そんな事を冷静に思った時、土壁にもたれてへたりこむ女の子二人が懐中電灯の円の中にいた。

 早く帰るよ!!!!なんか知らないけど、変な事なっちゃったんだからね!! 私のめんどくさそうな怒鳴り声に、這うようにして立ち上がると二人は外から照らす懐中電灯の明かりを頼りに走り出た。

 二人して反省とか、お礼はないわけ?生意気なんだから!!そう思いつつ、私も外へ出ようとした。ザザザッと靴音がして、見れば一人の指導員が子供たちを連れて立ち去るところ。

もう一人の指導員は入り口で、私の足元を照らしていたが、出て見れば真っ青を通り過ぎて真っ白な顔で立っていた。

 何も言わないので、私も黙ってキャンプ場に帰った。何より、眠かった。

 翌日になって、二人の3年生がお礼?謝罪に来た。他の子と一緒に。なんで?先に帰ったから?

 違った。それもあったけど、怖い思いをして助けに来てくれたのに、何も言えなくて…だった。

 不気味ではあったが、さほど恐怖は感じなかった。自分が最高学年だったし、仕方ないと思っていたから。

 でも、それもまた違っていた。聞かなかったの?と3年生。何を?

 これは付いてきた下級生も同じだと言い、指導員も同意していたのだが、地下倉庫に近づいた時に倉庫の中から叫ぶ声と何かを打ち鳴らす音、ダダダダっと駆けてくる足音(靴音ではなく)がしたと言う。その時には、私は入り口から入っていて、いくら呼んでも振り向きもしなかったと言う。

その音がだんだん近くなって、私の立った場所くらいまで来たんじゃないかと言う時、ピタンと止んだと言います。

 中には汚いぼろをまとった骨と皮だけみたいな人間が私の靴に額をこすりつけていたと言う子がいました。

 そんなものは聞いてないし、見ていない。穴の少し奥に二人がいて、二人を叱って出てきただけだ。

 その時、同級生のお母さんも連絡を受けて来ていた。

 美利河ちゃんにはね、道(導?)師さんの血が流れているのよ。わずかみたいだけど。お父さんの名前がそうだし、美利河ちゃんには人には見えない道師の印がついているの。

 道師と聞いても、キョンシーしか浮かばないと私が答えると、お母さんは笑って、それなのよ、と言いました。

 日本で言うお坊さんかな?だから、美利河ちゃんでないと、地下倉庫には入れないの。

 霊能力はおろか、見る事、聞く事さえままならない道師がいるものか。美利河には強い味方がたくさんいるのよね、おばさんが笑っていた意味は高校になって理解する。

 だが、私にはまったくもって霊感がない。知らずに蚊を寄せ付けない除虫菊みたいじゃないか…と遠い夏を振り返る。

怖い話投稿:ホラーテラー 美利河さん  

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