友人4人で肝試しに行ったときの話です。なお、友人の名前は全て仮名です。
「ちょっと噂になってる廃墟があるらしいんだけど…行ってみない?」ユウが話かけてきました。
なんでも、去年か一昨年に倒産した会社の工場だとか。
私は幽霊なんてまったく信じていないのですがホラー映画や怖いものは大好きなので、ユウの誘いを喜んでOKし、仲良しのアキとミユも誘って4人で肝試しに向かう計画を立てました。
夕方まで土砂降りだった雨がやみ、月がキレイに顔を出した日の深夜0時過ぎ、ユウのワゴン車で出発
県道から外れた山道に入りしばらく走ると、小高い山の中腹に目的の工場が見えてきました。
建物は思っていたより大きく、ソコソコの規模の会社だったようです。
外観はそれほど老朽化していないようにも見えました。
ただ敷地内に入ると、生い茂った雑草がザワザワと風に揺れ、月明かりだけが不気味に建物を照らしていています。
まさに肝試しにはピッタリの雰囲気
一番怖がりのミユが言いました。
「やっぱ帰ろうよ~なんか出そうだし…ヤバそうだよ…」
活発なアキは「うん。出るかもね~犬とか猫とかタヌキとかwホラ、行くよ!」とミユの背中をポンと叩きました。
アキは私たちの中ではムードメーカー的存在でこんな場所でもホントに緊張感なく楽しそうです。
私たちは懐中電灯を手に、裏口の一つを開きました。
中に入るといきなり広いフロア。それなりの設備や機械も列んでいたんでしょうが、今は残骸しか残っていません。
ツーンとしたカビ臭さとどんよりと重く湿った空気
床には空き缶やペットボトルが散乱し、壁中には無数の落書き…
想像以上の気持ち悪さです。
私たちは懐中電灯の光が作り出す影や反響する自分たちの足音にキャーキャーと騒ぎながら建物の中を探索しました。
小一時間ほどウロウロして
「あ~やっぱり何にもないね。そろそろ帰るか」と出口に向かおうとしたときです。
「…あの人…何してんだろ?」
アキが通路の奥の方を指差しました。
私たちは懐中電灯で照らして
「どこ?」
「なんにもないじゃーんw」
「おどかさないでよ~」
と笑ってたんですが、アキは「ホラ…あそこに…」と言いながら早足で歩き始めました。
「ちょっと待って!」
追いかける私たちの声なんてまったく聞こえないかのように、アキは真っ直ぐ前だけ見ながらどんどん奥に進みます。
そして通路の突き当たり、『管理室』と書かれた部屋の前で立ち止まると、少し腰をかがめて何もない空間に向かって言いました。
「…こんなトコで…何してるんですか?」
え?ちょっと、マジでヤメてよ!そう私が言いかけた瞬間です。
……バタッ……
まるで糸が切れた人形のように突然アキが倒れました。
見たこともないアキの姿に呆然とするユウとミユ
私だって冗談であってほしい状況だけどそんなことも言ってられない様子で
「アキっっ!?」
私が抱き起こすと彼女は白目を剥き、歯を食いしばって全身はガタガタと震えています。
「とにかく外へ!」
3人でアキを抱きかかえ大急ぎで山を下り、救急病院へ駆け込みました。
検査の結果、おそらく極度の緊張と強いストレスによる意識喪失で、点滴して休めば大丈夫だろうとのこと。
しばらくするとアキは何事もなかったような顔で目を覚まし、私たちが聞きたかったことを逆に口にしました。
「…何があったの?」
私たちは今までの経緯をアキに話したのですが、彼女は工場へ入ってしばらくしてからの記憶が全くなく、気付いたらベッドの上だったというのです。
結局アキが見たものは何だったのか…
精神的なもの?
それとも本当に『何か』いたのか…
今となってはわからないのですが、実はもう一つ不可解な出来事が起こっていたんです。
最初にも言いましたが、私は幽霊とか信じてないし、霊感なんて1ミリもありません。(そもそも霊感自体を信じてないですから)
なので以下の話は私の気のせいで済ませたいと思い、彼女たちには話していません。
アキを建物から運び出すとき、私は何回も振り返りアキの話しかけたその場所を見ました。
確かに何もないのですが、建物から出るとき誰かの『声』が聞こえたんです。
男とも女とも聞こえるようなその声は耳からではなく、直接頭の中に響くようにかなりハッキリと聞こえました。
「…モウ、クルナ」と
怖い話投稿:ホラーテラー マーさん
作者怖話