明日は選挙の投票日だというのに、ある大物政治家の選挙事務所は、閑散としていた。
秘書の、賄賂による買収容疑が、スキャンダル化した為である。
誰もいない選挙事務所の椅子に座り、秘書はうなだれていた。
そこに一人の女があらわれた。
大きなマスクをした女だ。
秘書は女を見ると、
「ああ…君か、いやいや、君のせいじゃないんだ。この選挙事務所は、最初からマークされてたんだ、まあ、なるべくしてなった結果さ…。」
そう言うと、秘書は自虐的に笑った。
すると女が口を開いた
「ワタシ…キレイ?」
秘書は言った、
「ああ…綺麗だよ」
「コレデモ…?」
女は、ゆっくりとマスクを外した。
そこには、耳まで裂けた口があった…
秘書は、大きな声で言った。
「ああ、綺麗だよ!
外見なんて、目で見える物でしかないんだ!僕の汚れきった心に比べたら…
君は、とても綺麗だよ。」
女は何も言わず、ただ秘書をみつめている、
秘書は話を続けた。
「君はその容姿で、都市伝説の地位を築いた、クチサケ女…
僕は、この話術で今の地位を築いた、
クチサキ男…
クチサケ女と
クチサキ男、
なかなか、いい組み合わせだね。」
女は何も言わず立っている…
秘書は、女の目をしっかりと見て言った。
「醜いのは君じゃない、この世の中だ!
なあ…僕も君の世界に連れて行ってくれないか?」
その時、女の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
そして、口裂け女と、口先男は、手をつないで、夜の闇へと消えて行った…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話