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短編2
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宴会

うちの亡くなった母は霊感があったらしい。

「らしい」と言うのは、私は見えないから母の能力が本物だと断言は出来ないからです。

そんな母から聞いた話。かなり前に聞いたので忘れてしまった部分もあるので、忘れた部分は創作してます。

ある時、母が一泊二日で仕事の研修兼慰安会で県内の宿泊施設に行きました。

昼間は研修をして、夜は宴会。

宴会場は襖で遮られた広間で、隣でも宴会をしている音や声が聞こえていました。

最初は気にしてなかった母ですが、同僚のAさんから「鳴門さん、気付いてる?」と言われました。

このAさん。幾つかのアパートを持つ資産家でもある初老の男性で、某宗派の修行をした事もある人。

母が仕事で一緒に山の方に行った時、何故か同じ場所をグルグル迷って出られなくなり『おかしい』と思ったら「これは何かが邪魔をしてるな」と言い、お経だか何かを唱えて助けてくれた事がある人。

A「隣。誰もいないよ」

そう言われて隙間から覗くと、中は真っ暗。でも相変わらず音や声が聞こえる。

A「ね?でも金時さんには見えるでしょ?」

そのままジッと見ると落ち武者らしき人物が数人、楽しそうに宴会をしているのが見えてきました。

母「…あっ…いる…落ち武者?」

A「そう。この辺はむかし合戦があったらしいから、その時に亡くなった人達やろう」

そんな事を話していると、落ち武者の1人が母とAさんに気付いた。

「お主ら、わしらが見えるのか?ならばコチラに来て一杯やらんか?」

母とAさんは悪い霊ではなさそうなので、自分達の宴会場から酒を持って参加した。

落ち武者達の話では、亡くなってる事は知っているらしい。

宴会があると自分達も楽しくなって、宴会をするそうです。そうして成仏出来る時を待っているらしい。

「だが、今までわしらに気付く者はいなかった。今日は楽しい酒になった」と大変喜んでいたそうです。

やがて(本来の)宴会もお開きの時間になり「そろそろ帰ります」と言うと「今日は楽しかった。また一緒に飲もう」と言われたそうです。

それから数年。Aさんは亡くなり、宿泊施設は営業不振で閉鎖してしまいました。

そして4年前に母も亡くなったので「また一緒に飲む約束」は叶いませんでした。

いや、もしかしたらあの世で再会して宴会してたかもしれませんね。

怖い話投稿:ホラーテラー 鳴門金時さん  

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