これは、私が体験した不思議な話です。
10年程前、私はF県では有名なバンドのドラマーだった。(後にメジャーデビューする)
その日は、自分のバンドのワンマンライブ で、私はドラムのセッティングのためにメンバーの誰よりも早くライブハウスに入った。
このライブハウスは、全国でも有名な箱、今は別の場所ある。当時は、雑居ビルの地下一階にあった。
地下一階の入り口へは、外からの階段のみ。あとは楽屋とビルの非常階段が繋がっている。
ライブハウスの入り口を入ると、真正面にステージがあり、ステージの左側から楽屋へ続く通路があった。
私はドラムのセッティングをしながら、個々の荷物を持ってライブハウスに入ってくるメンバーと下らない話で盛り上がっていた。
R君が三往復目の荷物運びになるだろうか...衣装を持ってライブハウスに入って来た。
私は、R君をなんとなく見ていた。ホントになんとなく...。
R君は誰かと話していた。会話の内容はわからないが、声はなんとなく聞こえる。
R君は、舞台袖の通路(入り口から見て左側、私から見て右側)を通って楽屋へ衣装を運んでいた。
私は他のメンバーと下らない話をしながら「間違えなく」R君を見ていた。
R君が私の視界から完全に見えなくなった...直後。R君は絶叫とともに皆のいる場所(客席)まで走って来た。
たった今さっき俺と会話してた人...誰?
誰も答えない...
R君は...
俺は、誰かの後ろをついていったんだよね...でも楽屋へ入ったら誰も居なくて...
私は、R君がライブハウスへ入って来た時から、楽屋への通路を通るまで、ずっと見ていた。
確かに誰かと会話していた。
しかしR君は一人だった...
間違えなく一人だった。
このライブハウスの不思議な話しは、数多くあり。体験者も友達の友達ではなく、直の先輩からが、そのほとんどだった。
今はもうこのライブハウスない。
R君は一体何の後ろについていったのだろうか...。
怖い話投稿:ホラーテラー 元バンドマンさん
作者怖話