僕は、子供の頃とても貧乏でした。
貧乏だという理由で、イジメられ、いつも一人きりでいました。
その頃の、お気に入りの場所は、お寺の境内でした。
高い所から街を見ながら、大好きな絵を書くのが、一番好きな時間でした。
絵を書く前に、境内にある、お地蔵様に手を合わせお願いします。
「どうか、お金がたくさんになりますように。」
これが、小学生の時の僕の日課でした。
ある日、いつもの様に境内に行き、お地蔵様にお願いしていると、境内のベンチに座ってた、おばあちゃんが話かけてきました。
「あんた、いつも地蔵様にお祈りしとるが、水子供養の地蔵様に、いったい何をお願いしとるんじゃ。」
僕は、水子供養なんてものを知りませんでしたので、
「あのね、お金がたくさんになります様にってお願いしてるんだよ」
おばあちゃんは、面食らった顔して、
「お金ねぇ…あんた、お金なんてどうするんだい。」
そう聞いてきました。
僕は、
「僕の家、父さんいないんだ。だから母さんが、いつも夜勤に行ってる。お金あれば、母さん夜勤に行かなくていいだろ。だから、お願いしてるんだ。
後ね、欲しいものだって買えるし…。」
おばあちゃんは、僕の近くにきて、
「あんた、欲しいものあるんか?」
僕は即座に、
「絵の具セット!」
そう答えました。
おばあちゃんは、悲しいような、可笑しいような、そんな顔で僕の頭をなでました。
その日から、おばあちゃんを見かける事は、なくなりました。
しばらくたったある日、僕が境内で絵を書いてると、一人のおばさんが声をかけてきた。
「ねぇねぇ、ちょっと前に、ここでおばあちゃんと話しなかった?」
僕は、
「はい…話しましたけど」
おばさんは、
「良かったああ、見つかった。あのね、君と話てたおばあちゃん、5日前に亡くなったの…
でね、そのおばあちゃんの遺言書に、あなたの事が書いてあったの。
私の残すお金で、あなたに絵の具を買ってあげなさいて…。おばあちゃん、ずっと寝たきりだったのに…不思議よね。」
そして僕に、大きな紙袋をくれました。
そこには、何十種類の絵の具セットと画用紙、筆が入っていました。
そして今僕は、なんとか絵で食べていけるようになりました。
あの時、おばあちゃんがいなかったら、今の僕はありません。
おばあちゃん、ありがとう!
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話