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短編2
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キヨちゃん

地元に帰ってくるのは何年ぶりだろうか…

バスの停留所に降り立ち、私は周りを見渡した。

何も変わらない村、家も空き地も森も、あの頃と全く変わらない…

バスの停留所から、少し行くと、私の実家までつながる近道がある。

知る人ぞ知る、秘密の道だ。

溜め池の横を通るその近道は、子供は通ってはいけないと、よく怒られたものだ…

(キヨちゃん…)

あれは、真夏の暑い日だった。

僕と、キヨちゃんは、街に行くため、この近道をつかった。

バス停まで競争だ!

はしゃいでたキヨちゃん。

足が早いから、僕はどんどん離されてしまった。

(キヨちゃん…待って)

僕は夢中で後を追った。

近道の溜め池で、キヨちゃんの声が聞こえた。

「た…ぷは…たすけ…はあはあ…たすけて…ぷは…」

足が滑って溜め池に落ちてしまったのだ。

僕は何もすることができなかった。

体が動かなかったたんだ…

ただキヨちゃんが、池に沈んで行くのを見ていることしかできなかった…

(キヨちゃん…)

キヨちゃんの遺体は、次の日見つかった。

僕は、地元に帰って来なかったのじゃなく、帰りたくなかったのだろう…

悲しい思い出が、僕をそこから遠ざけていたんだ。

何年かぶりに通る近道も、あの時のままだ。

もうすぐ、キヨちゃんを奪った溜め池に着く。

その時、溜め池の方から、声がした…

「た…ぷは…たすけ…はあはあ…たすけて…ぷは…」

(キヨちゃん…)

僕は、溜め池を見ることができなかった。

キヨちゃんを見ることが怖かった…

(ごめん、キヨちゃん、僕はあの時のまま、なんもかわってないっちゃが…)

僕は家まで走り出した。

(ごめんキヨちゃん、ごめんキヨちゃん)

と、泣きながら…

家まで着くと、僕の姉さんが家の前で待っていた。

僕は、泣き腫らした目を必死で隠した。

姉さんは、僕を見て、

「あんた、遅かったねえ、あれ? うちのケンタがバス停まで迎えに行ったんだけど、あんた、見なかったと?

ケンタめ、またあの近道さ使ったんね、危ないから使わんねと、いつも言ってるのに…」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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