中編4
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友人と旅行にきていたときのこと。

ザァー…

「やだー。雨降ってきちゃった」

「天気予報外れてるじゃん。最悪」

近くの古いタバコ屋の屋根の下で友人とそう話していた。

天気予報では雨が降る予定はなかったはず。あまりの豪雨に友人と身を寄せ合いながら、震えてきた。風もある。

昼間が暑かったので、薄着だった私たちはどこか泊まる場所を決めることにした。

「由香!あそこに宿みたいなのあるよ」

「なんか不気味な場所だね」

「でもずっとここにいるよりかはいいと思わない?」

「そうだけど…」

「なら行こうよ。風邪ひいちゃうよ」

そう言い、友人は私の手をひいて宿へと走っていった。

私たちの他にもたくさんの人がいた。見た目に寄らず、中は結構きれいな場所だ。

「こんにちは」

「こんにちは。あの、一晩でいいんで泊めさせていただけませんか?」

宿の女将は黙り込んだ。

「…え、ええ。大丈夫ですよ。では、こちらへどうぞ。お部屋をご案内いたします」

なんだろう、と不思議に思ったものの、私は部屋へ向かった。

持っていたバッグを放り投げ、布団の上に身を飛ばせる。ふわふわと温かい布団にうっとりしている友人に言った。

「髪ビショビショじゃーん。ほら、お風呂行こうよ」

「んにゃ〜疲れた」

「亜梨沙、起きて!」

友人は寝てしまった。

仕方ない1人で行こう、そう思い、部屋のドアを開けてみると、先にきていた人がロビーに集まっていた。

大きな荷物をまとめている。

なんだろう、と思いながらも私は浴室に向かった。

一時間後。私は部屋に戻った。

入浴前と変わらず、友人が寝ている。布団をかけてやるなり、友人がなにかを言った。

「にごうしつまえ…」

なにを言っているのか上手く聞き取れなかった。私は、どうせ寝言だろう、と思い、布団の中に入った。

携帯をいじっている間に、もう10時半になっていた。さすがにもう寝ようと、携帯を閉じると、メールがきた。

ピリリッ!

見覚えのないアドレス。

間違えだろう。そう思い、文章を見ずに携帯を再び閉じた。そろそろ眠気がやってくる。

こんな不気味な宿からさっさと帰りたい。旅行なんかくるんじゃなかった、と思いながら、布団にくるまった。

――…

ピリリッ!

メールが受信される音に目が覚める。

携帯を開くと、さっきのアドレスと同じだった。返事をしていないのに件名に「Re:」と、書かれている。

誰か知り合いかもしれない。眠そうに文章を見てみると、画像が貼られていた。真っ暗闇だ。

なんだこれ。不思議に思いながら、前のメールを見てみる。

真っ暗だった。

「なんだ…イタズラか」

そう思い、携帯を閉じる。

隣りでは友人が寝ている。雨は、まだ降っているようだ。風があって、窓がガシャガシャいっているのがわかる。

目が覚めてしまい、眠気がなくなってしまった。はやく寝ないと、そう思いながら目をつむる。

ピリリッ!

メールが受信される。

また携帯を開くと、画像がある。また真っ暗なんだろう、と思い見てみると、輪郭が薄らと見えた。

人のようなものに思える。

なんだ、と驚きもせずに携帯を閉じる。

ピリリッ!

いい加減にしろ、そう思いながら携帯を開くと、画像の貼られたメールがきている。

見てみると、今度は鼻と口が見えた画像だった。これを見て、人だとわかった瞬間、怖くなった。

件名は「Re:」のままだった。

次は目か、と予言をしながらも携帯の電源を切った。

そして布団にくるまり、友人のほうに体を向ける。

怖い。雨が強くなっていき、震えが止まらなくなってきた。

ピリリッ!

電源を切ったはずなのに!

メールが受信される。震えながら携帯を手にするが、メールを見たくない。

携帯を手放し、友人を起こそうとする。

「亜梨沙、起きて」

友人が起きる気配はなかった。

誰かに会いたい。それしか考えずに部屋を飛び出した。2号室前に、女の人がいた。

「あ、あの!」

そう声をかけたが、彼女はなにも言わなかった。ただ、一言だけかすかに聞こえた言葉。それは……。

「なんでメール見てくれないの?」

――…

あれからの記憶はまったくない。私は友人の隣りで寝ていただけだった。

携帯にあのメールは残っていたものの、画像は見れなくなっていた。

なにがあったのかわからないまま、私と友人は帰った。

「なんかさ、変な宿だったよねー」

「うん…」

「どうしたの?元気ないじゃん」

友人に問われたが、私は「なんでもない」としか返事をしなかった。

あのメールを送ってきたのは、あの女の人だったのだろうか。まだわからない。

でも、あれ以来メールはこなくなった。

私たちは無事、自宅へ帰っていった。

: JHARD

怖い話投稿:ホラーテラー JHARDさん  

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