女は、俺の体をさすことになんの躊躇も見せなかった…
血だ…赤い血が俺の目に焼き付いた。
女は表情ひとつ変えず俺を見つめる。
なるほど…任務を遂行させる為には、余計な感情は必要ない訳か…
さすがプロだ。
だがこれでよかったのかもしれない。
俺が犠牲になれば、この組織から少しは貰えるだろう。
それで、母さんの…母さんの胃腸を治してあげられるかもしれない…
この女も、任務遂行の報酬を貰えるはずだ。
血を必死で押さえなが俺はこんなことを考えていた…
感情がない口調で女は言う。
「終わりよ…」
ふっ…終わりか。
随分呆気ない幕切れだったぜ。
女だって好き好んでこんなことをやってる訳じゃないんだろう。
俺は、最後に精一杯の強がりを言ってやった。
「心配するな…こうなることは始めからわかっていたんだ…」
女から報酬のヤクルト3本を受けとると、
俺は献血のバスを後にした。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話