以前『何か』を祓ってくれた祖母の話を投稿させてもらったのだが、今回はその祖母の話を書かせてもらいたいと思う。
祖母は常々「言葉」に対して慎重だった。
理由は「言葉には魂が宿るから」だと言う。
普段から妬み、嫉み、恨みなどを口に出すと、相手にも害を及ぼすのは勿論、自分にも何倍にもなって還って来るのだそうだ。
そんな祖母のエピソードを一つ。
当時の祖母は長屋と呼ばれる平屋の集合家屋に住んでいた。
まだ幼かった母は当時としては珍しい一人っ子。そんな母を寂しがらせない為、猫を飼ったそうだ。
まだ昭和30年代の話。猫は当然のように放し飼いだったらしい。
それが悪かったのか家族皆で可愛がっていた猫は、ある日を境に帰ってこなくなった。
祖母も懸命に探したが見つからず、中でも母の落胆ぶりが可愛そうで色んな人に猫の捜索を頼んだそうだ。
そんなある日、祖母にとってショックな話を聞かされる。
同じ長屋の住人が、猫を生きたまま川に流したと言うのだ。
その話を聞くや否や、すぐさま事情を聴くべく当人の元へと急いだ。
「サカリの声がうるさかったので川に流した」
当人は悪びれるふうもなく答えたそうだ。
確かにサカリのついた猫はうるさくて迷惑だったろう。だが、なぜ一言、言ってくれなかったのか…
あまりに酷く悲しい話に、祖母はつい「ロクな死に方はしない」と言ってしまったそうだ。
…そんな悲しみも多少は和らいできた頃、再び祖母にショックな話が。
猫を川に流した人が自殺したと言うのだ。
死因はクレゾールを多量に服用した為の中毒死。
祖母は自分が言ってしまった言葉を心底後悔したそうだ。
葬儀は同じ町内の者で協力して行われる。
同じ長屋の祖母が遺影の写真を選んでいる時──
長屋をバックに映っている当人の写真が、全てミイラのようになっていた。
この時、祖母は思い出す。
クレゾールは猫が一番に嫌がる薬品だということを。。
以上が祖母から聞いた話だ。
勿論聞いた話なので実話かどうかは確かめようが無い。
しかし、祖母の言葉は今も心に残っている。
「猫の祟りだとは思いたくない。自分の言葉のせいとも思いたくない。だけど、言霊とか呪いは確かにあるのだから、軽々しく人を傷つける言葉を使ってはいけないよ」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話