駅のホームのベンチに座っていると、向こうのホームからこちらに向かって、手をふる女の姿が見えた。
(またあの女だ…)
最近良く見掛ける女だ。
何故か俺に向かって手を振ってくるのだ。
女に全く見覚えがない。
飲み屋の女でもなければ、昔の同級生でもないだろう。
(何故俺に手を振る?)
俺は、女に近づくのが怖かった…
得体の知れない恐怖が、女に近づくなと俺に忠告している。
しかし今日は違った。恐怖より好奇心の方が勝った。
人通りも多い昼間だという事もあるだろう。
とにかく、俺は女の所へ行き、俺に手を振る理由を聞き出す事にした。
向かいのホームに行くと、女はこちらを向いていた。
やはり俺に手を振っていたようだ。
俺は女に近づいて行ったのだが、近づくにつれ好奇心は再び恐怖に変わっていった…
女は、この世の者とは思えない青白い顔をしていたのだ…
そして、手を振っていたのではなく、俺を手招いていたのだ…
俺は金縛りにあったように、身動きが出来なくなった。
すると今度は、女の方から俺に近づいてきた…
そして黒く窪んだ目を俺に向け、低い声で話し出した…
「やっと来てくれた。全く…何ヵ月待たせるのよ!ふぅ、やっと交代できるわ。あっ…あなた気づいてないみたいだけど、あなたも半年くらい前に自殺してるのよ。向こうのホームでね。
自殺した人は、順番にこのホームに呼ばないといけないらしいの…次はあなたの番。
ほら、あのおじさん。あの人を呼んでね。
じゃあ、お先に…頑張ってね。」
俺は呆然として話を聞いていた。
そして、女が消えて行くと、向かいのホームのベンチに座るおじさんに向かって、大きく手を上げた…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話