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中編3
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猿牢渓

僕の父方の田舎の話です。

僕の父方の田舎はY県県北にあるとても寂れた場所にあります。

鉄道で山を4つ越えた無人駅で降り、さらに無人駅から叔父さんが迎えにきたワゴンに乗り1時間近く緩やかな山道を登った場所の集落にあります。

僕がその田舎に行ったのは小学2年と5年と祖父の葬式があった高2の冬です。

祖父の葬式は今から7年ほど前になります。

その高2の時からの体験です。

僕と父と母と弟は、祖父が亡くなったとの一報を受け、田舎に向かいました。

その日は12月23日で、ヒドイ話ですが僕はクラスで仲の良い男女数名でクリスマスカラオケパーティを予定していたので、あまり接触のなかった祖父の死を悼むより、なんでこんな時期に…という気持ちが強かったのを覚えています。

無人駅に迎えにきてくれた叔父さんと父親の会話が妙な事に気づきました。

叔父は「死因は電話で話した通りアレじゃ」みたいな事を言い、父は「あれは迷信じゃろう(笑)」みたいな事をコソコソ話していましたが、僕は死因は老衰かなにかだろうと思い、祖父とはあまり接触がなかった事もあり、興味もなかったので気にしていませんでした。

通夜には集落から10人ほど出席し、淡々と進められていきました。

翌日の葬儀には、40人近く参列していました。

葬儀の最中変な事に気づいたのです。

僕たち家族以外が全員数珠と丸っこい毛玉みたいなものを握っていたのです。

叔父は父に「お前も家族もエンギョクを持て」とかしきりに言っていましたが「持たんでえーよ、そんなもん」と断っているようでした。

叔父は僕に「エンギョクを持たんと、アレに※※※(よく覚えてません)可能性がある。

前代の住職は死んでおらん。

今の住職は2代目でアテにならん」とか話しかけてきて、僕は困惑したのですが、父が「おい、○○(僕の名前)に変な事言うな」と叔父に言い叔父は不服そうに話すのを止めました。

その後は祖父の葬儀も終わり、火葬場に行くのかな?と思っていましたが、父や叔父の様子から棺を車に乗せて直接墓場に行くと言いました。

火葬とばかり思っていたので正直驚きましたが、土地の風習(習わし)が土葬のようで、そのまま墓に行くとの事です。

車も霊柩車ではなく普通のトラックで僕や母や弟は少し戸惑いながらトラックに乗りこみました。

近所の人や住職などの車3台であとをつけてきました。

行き先が分からないまま、舗装されていない山の獣道をグイグイ進みます。

30分くらい経つと車が通れないくらいの間隔になり、そこで車を降りました。

僕は「墓ってこんな山奥にあんの?まだ遠いん?」と聞いたら叔父が「今から棺をみなで担いで歩くから、○○も持て」と言われ、僕や父や叔父や近所の男たちと6、7人で棺を持ち、鬱蒼とした山道を歩きました。

母は嫌そうな顔で「こんな山奥なの?」や「だから今まで墓参りしなかったの?」とか聞いていましたが、父はひたすら無言で歩いていました。

10分くらい歩くと、横手に山あいの谷底?みたいなのが眼下に広がっていました。

山に四方囲まれているのですが、その谷底だけ平地でその真ん中に、木造の建物がありました。

建物は遠目から見ても酷く朽ち果てた様子がありありと分かります。

「なに?あの建物?」と父に聞くと、叔父が「見るな!!なんでや…なんで見えるんや…」と言い、周りの人たちもざわつき始めました。

「この道からは見えんはずじゃろ?」「なんでや…通る道間違えたか?」とか、棺を持つ人やそうでない人たちも口々に不気味な事を言い始めました。

僕はすごく興味があったので、「なになに?誰かいんの?なんなのあれ?」と父に向かって聞いたら「わしゃ知らんし、どうでもええわ。

まあとにかく一応は見るな」と言われました。

父はオカルトには一切興味がない人だと思っていたので、一応見るなと言われちょっと怖くなりました。

母は完全に怖がり嫌な表情をしています。

と、棺のそばにいた住職がいきなりお経を唱えだしました。

しかし最後列にいた老人が「こりゃクソ坊主!そんなん唱えんな!」と怒鳴りしました。

もうわけもわからず棺の重さも感じずに、ひたすら歩き続けました。

全員無言で虫の鳴く音もなく、静まり返った山道を皆が歩く足音だけが響いていました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん

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