この歌を口ずさんだ者、歌を聞いた者は一年以内に死が訪れる
そんな言い伝えのある歌をご存知の方はいらっしゃいますか?
私の育った土地にはその様な言い伝えが実際にありました。
もちろん、古くからの言い伝えという事で私達の世代の人間は迷信だと思っていました。
中学生の時、クラスの中で怖い話をした時にその歌の掛かれた巻物を所有している家がありその家は同じクラスの山本(仮名)の家だと聞いたのです。
山本家は代々宮司などの仕事を携わる家でその村(当時は村で現在は町になっています)では一番大きな家だった。
私達の同級生である息子は内気でこちらから話掛けないと話をしないタイプだった。
迷信だと思っていたあの話の真実に迫りたい。興味津々の私達は山本にそれとなく近づき仲良くなって行った。
山本と仲良くする理由は例の歌の巻物を見たいと言う理由は皆一緒だった。
ある週末、皆(三人)で山本の家に泊まりに行く事があり私達はこの日を心待ちにしていた。
山本家は他の家の三倍位大きく平屋ばかりの村には珍しい二階建ての家だった。家族は祖父と両親と山本の兄、姉、妹と何故か従兄弟が住む大家族だった。
大広間で皆で一緒に夕食を囲んでいる時に友人の一人の田中(仮名)が
『歌うと死ぬ歌って知ってますか?』
と突然聞き出した。
あまりのタイミングの悪さに私ももう一人の友人の秋元(仮名)も唖然としてしまった。
すると山本家の全員が一瞬固まったがすぐにお爺さんが
『あぁ…あるとも。その話は本当の話で私の先代の頃からこの家の蔵に保管してあるんだ。』
と、あっさりカミングアウトされたが本当にあるんだ。と私達は興奮していた。田中『見る事は出来ますか?』
お爺さんには断固拒否した。
以前、見るだけと約束した者がいたが言葉を発してしまい死者が出た事があるのでそれ以来、蔵にも鍵をかけ巻物を人目に触れさせた事はないとの事でした。
中学生の私達の好奇心は益々膨れ上がった。
就寝前に田中が山本に
『今日はこれ目当てに来たのにー。今まで山本と仲良くしてやってたのはなんだったんだよ。』と吐き捨てた。
心ない一言に私、秋元はドキッとしながら山本を見る。
山本は悲しそうな顔をしたがすぐに笑顔になり
『蔵の鍵開けて巻物見に行ってみようか?』と言い出した。
田中『その言葉を待っていたんだよ。山本、さっき言ったのは本心じゃないからな。安心しろよ。俺達は仲間だ。』 と調子の良い事を言っていた。
山本は鍵をを取ってくるから蔵の前で待っててと言い部屋を出て言った。
私はワクワクしながらも空気読めない田中がまた何かやらかさないかが心配だった。
秋元も同じ事を思っていた。
家をそっと抜け出し蔵の前で待っていると懐中電灯を持った山本が忍び足で近づいてきた。
田中『早く来いよ。』
秋元『シーッ。声出すなよ。』
山本『少し待ってて。今、鍵を持って従兄弟も来るから。』
急遽、従兄弟も加わり5人で蔵に忍び込んだ。
蔵は広く湿っていて肌寒い。電気は無いため山本の持ってきた懐中電灯を頼りに巻物を探す事にした。
しかし中はガラクタの様な物が散乱していて目当ての巻物を見つけられないでいると従兄弟がポケットからペンライトを取り出し明かりは二つに増えた。
そして阿弥陀籖でチームを作り二手に別れて巻物を探した。
私は山本、秋元の三人で正直安心した。
一方、田中はあまり面識のない年上の従兄弟と二人なのでおかしな言動も控えているようだった。
しばらくすると私達の頭の上の方からボソボソと声が聞こえる。
そこは屋根裏になっていて微かに漏れた光から田中達が屋根裏にいる事がわかった。
山本も以前から巻物の存在を知っていたがこの蔵に入る事を禁止されていた為、入るのは今日が初めてだと言っていた。ちなみに後から来た従兄弟も山本と同じ好奇心で見に来たそうだ。
巻物はなかなか見つからない。次第に息苦しさを覚えて外に出たいと言うとバレたら本当にヤバいから今日はここまでにして続きはまた来週にしよう。という山本の意見で私達は先に外に出た。
するとそこには従兄弟と田中が立っていた。
『なんだ、先に出てたのかよ?』
その問いに二人とも答えてくれません。
よく見ると田中はガタガタ震えていました。
とにかく部屋へ戻る事にし。従兄弟は鍵を返してそのまま寝ると言ってそこで別れた。
田中『俺、死ぬかもしれない。あの歌の書いてある巻物見つけたんだ。昔の字でなんて書いてあるか分からなかったんだけど…お前の従兄弟が声出して読み上げたんだよ。すぐに耳塞いだんだけど今度は婆さんみたいな声でその言葉が歌になって聞こえたんだよ。ヤバいよ本当に。怖ぇーよ。助けてくれよ。』
田中は涙目になって布団を被ってしまった。
私達も迷信だから気にするな。恐怖感が産んだ幻聴だ。と慰めましたがその日、田中は布団から出てくる事はありませんでした。
そして次の週末に巻物を探す事はしませんでした。
それから半年後に山本が葬式で学校を休みました。
あの時いた従兄弟が亡くなったのです。
急性白血病とかで発覚したのは三ヶ月前。進行が早く呆気ない死でした。
田中はあの日以来、元気がなく学校も来たり来なかったりでした。
しかし会えば話もするが以前とは全く違う奴になっていました。
そしてもうすぐ一年が経つという頃、田中は亡くなりました。
自殺でした。
山本家の裏手にある例の蔵の横のけやきの木で首を吊っていたそうです。
遺書もありそこには蔵に侵入した事、蔵で聞いた歌の事、山本を怨む事など書いてあったそうです。
田中の遺書がきっかけで私達が蔵に侵入した事が発覚し、後日山本家に呼ばれたのだ。
大広間には山本のお爺さんが巻物を持って待っていた。
そして巻物にまつわる話をしてくれた。
難しい言葉ばかりで当時の私達にはよく分からない内容だったが、巻物に掛かれた歌は人の血で書いた物だという。
しかも一人の血だけではなく複数の人間が怨みを持ってこの世を去る前に自分の血で綴った怨み節なのだという。
その怨み節の巻物は怨む相手の敷地に投げられて次々と怨みを乗せて回っていたそうです。最後に回っきたのは山本家の祖先にいる女性の元だった。
その女性は退屈凌ぎにその巻物の言葉に音程を付け歌にして歌っていました。
するとその歌う姿を見た者が一年以内に死亡する様になったそうです。
歌った本人も一年以内に死亡しました。
噂はたちまち広まり山本家は村から迫害を受けその村から出て行く事になった。
そしてその巻物がは一度は焼却されたはずなのに後の代の時には庭先に埋まっていたという。
それからは厳重に保管し外に漏れないようにしてきた。
山本家の後継ぎはこの話をされてずっと守ってきたそうです。
お爺さんからは難く口止めをされ家に帰された。
山本とはそれ以来疎遠になってしまう。
山本から離れて行ったのだ。
月日は経ち、高校を卒業した私と秋元はそんな思い出の残る村から出て行く事にした。
盆と正月には村に帰るけれど村の外れの高台にある山本家のけやきの木が嫌でも目に入ってくる。
思い出したくない事が頭を過ぎり田舎にも帰る事が少なくなっていった。私や秋元は実際に恐怖体験をしていないがなんとも後味の悪い思い出になってしまったので。
今は町になり以前の村の面影はほとんどないが高台にあるけやきの木と山本の家はあの頃と変わらないまま残っている。
山本は今どうしているのだろう。
長い話ですみませんでした。読んでくれてありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話